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SCP-755-KO-Aの身体変容を描いた画像
Name: 技術を学べ、知識を身に付けろ、大事なことは他にある
Author: (user deleted)
Rating: 10/14
Created at: Sun Oct 27 2024
ObsP-322KでSCiPNET接続が検出されました
セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2030-09-28
何の目的でこの場所が存在しているのか、全くわからない。最初は生存主義者が建てたバンカーか何かだと思っていたが、この端末は見たこともないイントラネットに接続するためだけに使われているようだ。サーバーの状態は非常に悪く、管理者もいないようで、本来ならば私のような一般人が自由にアクセスできる場所ではないのだろう。他のユーザーと連絡を取ることもできない。意味があるかどうかはわからないが、見たことや感じたことを書き留めるために、ここを利用することにした。
ミレは、「ここにある機器には触れない方がいい」と言っている。正直、彼女の言う通りかもしれない。初めて接続した時に表示された警告文もそうだったが、何か恐ろしいことが起きたという暗示が、あちこちに見受けられる。しかし、こうしてでも声を出さなければ、気が狂いそうだ。それに、手がこの状態になってから、ペンで文字を書くのが非常に不便になった。
とにかく、この隠れ家は市街地から離れていて、長期間生き延びるための物資も十分に備蓄されているから、しばらくは生存できるだろう。ただ、どれだけ生き延びられるかはわからない。この悪夢が終わるまで、命が繋がっていることを祈るばかりだ。
アイテム番号: SCP-755-KO
オブジェクトクラス: Apollyon Neutralized
特別収容プロトコル
SCP-755-KOは2032年11月23日現在、無力化されており、SCP-755-KO-A/Bの発生事例は報告されていません。唯一残存するSCP-755-KO-AであるA-ap145およびA-mt990は、財団および人類文明の影響範囲から完全に離脱している可能性が高いと推測されます。
説明
SCP-755-KOは急激な身体変容現象および関連するミーム現象です。2030年1月12日にアメリカで初めて発生が報告され、その後すぐに全世界で確認されました。SCP-755-KOの影響を受けた対象者1の主な変化として、利き手の掌に黒いキチン質の棘が発生し、人差し指と親指の間に向かって成長します。この棘の長さには個体差があるものの、平均的には約20cmです。この棘は非常に硬く、理論上、折れたり曲がったりして形状が変化することはありません。
ObsP-322KでSCiPNET接続が検出されました
セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2031-01-02
言葉を話す方法は未だに思い出せない。このバンカーに閉じこもってからの3か月間、言語能力を取り戻そうと試みたが、すべて無駄だった。腹立たしい。問題は、ミレも同じ状況だということ。このバンカーには2人しかいないが、お互いの存在にストレスを感じているため、できるだけ顔を合わせないようにする暗黙の了解が成立している。
単なるストレスだけが原因ではない。この棘が生えて以来、自分の精神が自分以外の何者かによってかき乱されているような感覚が続いている。幽霊なのか寄生虫なのかは分からないが、何者かが喉や口を操り、言葉を発する方法を脳から消し、その空白を棘に関する情報で埋めようとしているようだ。ミレと話そうとするたび、口よりも棘の方が効率的な意思疎通の手段だと無意識に考えてしまい、何度かはっと我に返ったが、その回数すら覚えていない。
馬鹿げた話のようだが、ひょっとすると理にかなっているかもしれない。このバンカーに入る前、他の人々が棘を動かしながら、何かを伝え合っているのを見たことがある。どこかで学んだわけではないが、棘が生えている人たちは皆、そのジェスチャーが何を意味するのかを自然に理解していた。私もミレも同じだった。
問題は、そのジェスチャーがどれもこれも粗暴であるということだ。おそらく、今自分が受けているストレスが影響しているのかもしれない。苦痛ではあるが、一つ一つを分析し、整理してみるつもりだ。もしかしたら、これを読む誰かの役に立つかもしれない。
SCP-755-KO-Aには、身体変容のみならず精神変容も発生します。SCP-755-KO-Aは、棘の発生後1分以内に声帯を通じた意思疎通能力を完全に喪失します。手話や筆談など他の身体機関や道具を用いた意思疎通は可能ですが、声帯や口腔を用いた音声生成の方法は完全に喪失します。このコミュニケーション障害を補うため、多くのSCP-755-KO-Aは手に生じた棘を特定の動作で操り、意思伝達を試みる様子が観察されています。
ObsP-322KでSCiPNET接続が検出されました
セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2031-03-11
発話と振る舞いを区別する基準は『突き刺すこと』だ。
ObsP-322KでSCiPNET接続が検出されました
セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2031-05-02
核心的なルールを理解した。この棘を手で握り、相手に正面から向けた時を基準として、
0° = "死ね"
上に向けて、
45° = "ふざけるな"
75° = "クソ野郎"
90° = "失せろ"下に向けて、
-60° = "迷惑だ"
-90° = "寄越せ"など。
SCP-755-KO-Aは極めて攻撃的な行動を示し、周囲の人々や他の個体に対して負傷や死亡を高確率で引き起こします。SCP-755-KO-Aは手に生じた棘を短剣のように握り、対象を刺す形で攻撃を行います。この攻撃は通常の冷兵器と大差ありませんが、高度な訓練を受けたエージェントでさえ防御することができませんでした。2
ObsP-322KでSCiPNET接続が検出されました
セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2031-06-11
都市全体にある何千台ものCCTVが、このバンカーと接続されていることを今さら知った。これで外の状況を把握できる。長い間通信は途絶えていたが、ミレと一緒に監視カメラを通して送られてくる映像を確認することにした。
私たちと同じように、手に棘が生えた人々ばかりだ。全員がその棘をただ一つの用途に使っている。
棘で人を殺した者たちは、姿を消した。最初は消滅したのかと思ったが、ただ透明になっただけだった。何もない広場で、胸に穴を開けられて倒れていく人々が見えた。
SCP-755-KO-Aが他の人間や他のSCP-755-KO-Aを棘で刺して殺害すると、再び変容が発生し、人間の感覚器官や通常の装置では感知できないfクラス非存在思念体に変容します。この変容した個体3は依然として現実の物理法則に従いますが、他の非存在思念体を除き、現実世界の物質や存在には影響されません。そのため、SCP-755-KO-Aの攻撃対象とならず、仮に攻撃されても棘が身体を通り抜けます。しかし、SCP-755-KO-Bは変容前の個体と同様に高い暴力性を持ち、非存在思念体としての特性を備えているため、通常の生物や他のSCP-755-KO-Aにとって極めて危険な存在です。
ObsP-322KでSCiPNET接続が確認されました
セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2031-06-13
虐殺はまだ続いている。中には、自らの攻撃性を抑えようと必死に耐えている者もいる。人との接触を避け、目の前に人が現れるたびに目を閉じ、歯を食いしばって抑え込もうとする。しかし、多くの場合、最後まで我慢できずに自らが他者を殺すか、他者に殺されてしまう。命を落とす者がいる一方で、殺人を楽しんでいるわけではないが、生き延びるために他者を殺し姿を消す者もいる。しかし、ほとんどはそのような葛藤や迷いもなく、ただ殺し、そして消えていく。そこには、死体と、それを生み出そうとする者たちだけがいる。
かつては『言葉に棘がある』と言われていたが、今や棘自体が『言葉』だ。
比喩が実体となり、何十万人もの命を奪い、今もなお多くの人々を殺し続けている。
追伸。ミレが落ち込んでいる。私が見せた映像のせいで私を恨んでいるようだ。理解できなくはないが、正直、少し不満だ。
補遺1: SCP-755-KOの収容状況および被害状況
SCP-755-KOの完全な収容は不可能です。財団情報局の推定によると、SCP-755-KO-Aは一日に数十万人規模で増加し続けています。また、SCP-755-KO-Bについても、その特性上、正確な集計はほぼ不可能ですが、2031年5月3日時点で総数は推定約7億人に達しています。
この急速な増加に伴い、SCP-755-KOに起因する年間犠牲者数は世界全体で数千万人以上となり、急激な人口減少が発生しています。この事態は民間社会や国家機構だけでなく、財団のデータベースに記録されているほぼ全ての超常組織にも壊滅的な影響を及ぼしました。財団は現在、オブジェクトの収容よりも、この危機を安定させつつ、財団に対する被害を最小限に抑えることを目標としています。
このまま人口減少の傾向が緩和されない場合、遅くとも2037年には人類が絶滅し、GH-0クラス"死の温室"シナリオが発生することが予測されています。
補遺2: オブジェクトA-ap145のSCiPNETへの接続
SCP-755-KOの急速な拡散は、財団の活動にも甚大な被害を及ぼしました。拡散初期に各支部から寄せられた報告によると、各観測所やセキュリティ施設における異常対応要員がSCP-755-KOの感染、または殺害により著しく減少し、機能の70%以上が失われました。財団にとって最も大きな被害はSCiPNETネットワークに及んでおり、維持管理要員が壊滅したため通常状態での維持が事実上不可能となりました。ネットワーク管理AIの支援によりサーバーの崩壊は回避されましたが、ネットワークセキュリティ維持のための人的リソースが不足し、非許可者によるSCiPNETへのアクセスを防ぐことが困難な状態です。
2030年9月26日、SCP-755-KO-AであるA-ap145およびA-mt990が、大韓民国大田広域市に所在するサイト-322K観測所に侵入し、施設内のセキュリティ装置によって検知されました。これらの個体は、それぞれ20代のアジア系男性および女性であり、他の個体との衝突を避けるため、この施設へ逃げ込んだと推定されています。二日後、A-ap145が施設内のSCiPNET端末に無断でアクセスし、データベースに接続しましたが、当時の状況下ではアクセスの遮断や当該個体の拘束は不可能でした。
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セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2032-06-11
物資が底をつきそうだ。ここにずっと留まっていれば、せいぜい三ヶ月が限界だろう。
このイントラネットを通じて、近くに似たような別のバンカーがあることがわかった。あの幽霊たちが周囲に潜んでいるかもしれないが、運が良ければ生き延びられるかもしれない。それに、どうせここを離れなければ確実に死ぬのだから。
ひとつ問題がある。ミレだ。彼女はこの計画を聞いてヒステリーを起こした。昨年受けたショックがまだ彼女に影響を与えているようだ。彼女は「ここで飢え死にする方がましだ」と言った。昨年1月以降、これほど苛立ち、腹立つことはなかった。ミレがこれ以上私の足を引っ張らなければ良いのだが。
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セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2032-07-13
水はまだ大丈夫だ。問題は食料だ。
ミレは依然として私を困らせている。
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セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2032-08-30
ミレが自分の部屋に鍵をかけた。どうやったのかはわからないが、それほど頑丈な扉ではないので、壊して入るのは簡単だろう。頭がズキズキする。正直、これは私の責任だ。
今日、食べ物がすべて無くなった。もうミレが心変わりするのを待つ余裕はないので、「生き延びたいなら付いてこい」と言った。普段のような言葉や他の方法ではなく、棘を使ってだ。彼女は顔が青ざめ、逃げ出した。私はミレが閉めた扉を蹴りつけ、大声を上げたが、中からは微かなすすり泣きしか聞こえなかった。
今日が最後だ。明日も変わらなければ、私はミレを置いていく。彼女のせいだ。
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セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2032-08-31
計画を修正しなければならない。
今朝、目を覚ました時、外から足音が聞こえた。ミレの足音だった。まだ半分眠っていたが、彼女の手にある棘が異様に長くなっていることを突然思い出し、恐怖を感じた。私は扉に鍵をかけた。ミレは何度か扉を叩いたが、私は何も言わず、扉の横で待っていた。もし扉が壊れたら、その瞬間を狙うつもりだった。ミレは理解できない言葉をいくつか呟き、泣きながら立ち去った。
以前、このバンカーには二人しかおらず、その二人が互いにストレスを感じていると言ったが、今ではお互いを殺そうとしている。
こんなことはしたくないが、私は死にたくない。
忘れた時のために書き留めておく、
0° = "死ね"
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セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2032-09-01
外で刺されて死んでいった人たちのことを思い出す。彼らの顔にミレの顔が……そして私の顔が重なって見えた。
本当に愚かな行動かもしれない。でも、もしも、もしかしたら……
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セキュリティ認証: ERROR:SECURITY_IDENTIFICATION_DRIVE_MISSING
日付: 2032-09-01
この文を読む人が私以外にいないことは知っている。でも、もし誰かがいるなら……幸運を祈ってほしい。私のために。ミレのために。
もうすぐ夜が明ける。
補遺3: SCP-755-KOの無力化
2032年9月1日、SCP-755-KO-Aの残存個体から棘がすべて脱落しました。同時に、これらの個体に影響を及ぼしていたミーム現象も消失し、意思疎通能力が回復、さらに攻撃性も大幅に緩和されました。この事態を受け、O5評議会は翌日、SCP-755-KOによる非常事態の終息を宣言し、全生存施設に対して財団が被った損害の復旧および異常存在の再収容を命じました。
その一週間後、2032年9月9日、これまで未検知であったSCP-755-KO-Bが突如として姿を現しました。これらはすべて死亡しており、死因は、声帯に生じた棘が頸動脈を含む首の重要な部位を損傷したことと判明しました。現在、確認された死体の総数は10億体を超えますが、これらの死体は腐敗せず、末端から徐々に消滅しているため、死体処理に関する問題への対策は不要とされています。
2032年9月27日、SCiPNETが復旧しました。セキュリティシステムの再インストール後、個体A-ap145のSCiPNETアクセスを引き続き許可するかについて担当者間で意見が分かれましたが、最終的にこの個体のアクセスを遮断し、サイト-322観測所にエージェントを派遣してA-ap145およびA-mt990の捕獲または殺害を試みるとの決定に至りました。しかし、個体A-ap145の残した記録から、両者は既に死亡しているか、他施設周辺で発見される可能性があると推測されました。突入したエージェントは観測所内で両個体の死体を発見できず、他の観測所周辺でも確認には至りませんでした。
三日後、観測所の機能を復旧する過程で、個体A-ap145が紙にペンで書いた最後の記録が回収されました。
これが最後の記録だ。本来ならいつものようにイントラネットに入力するつもりだったが、許可されていないアクセスとして、もう接続できなくなった。おかげで何年ぶりかに紙に手で文字を書くことになった。気分は良いが、数年ぶりに手書きするため、文字があまり綺麗でないことは許してほしい。
この文を読んでいるあなたは、おそらく別の生存者であり、このバンカーの元の所有者かその知人だろう。もしかしたら、この"SCP財団"で働いていた人かもしれない。もしそうなら、あなたはあの最後の夜明け以降、ここで起こったことを初めて知ることになるだろう。
私とミレの手から棘が落ちた直後、私たちの頭の中にあった声も消えた。私たちは再び言葉を話せるようになり、もうお互いを疑いの目で見ることもなくなった。
そして、彼らがやってきた。本当に奇妙なことだが、『彼ら』という代名詞以外にその存在を指し示す方法がない。
彼らがどんな姿をしていたのか、どのようにこのバンカーに入ってきたのか、私たちはまったく覚えていない。ただ覚えているのは、彼らが私たちに話しかけ、そして……私たちを、いや、正確には私を称賛したということだけだった。
全知全能の神が大事にするのは能力や知識ではない。そんなものは無限に持っているからだ。彼らも同じだった。彼らは神的な力を持ちながら、同時に彼らが持っていないものを持っている存在を崇拝し、敬っていた。彼らはそうした者を探し、途方もなく長い時間をかけて宇宙をさまよい、彼らが出会った知的生命体やその社会に試練を与えてきた。まるで女王アリを探すためにアリ塚を掘り返すかのように。
そして私は、その試練を克服した者となったのだ。
彼らは私を発見し、試練の終結を宣言した。彼らは自分たちがしたことについて私に謝罪した。数十億人を死なせた行為を許せるだろうか?だが彼らは、この試練を通じて発見されるものが、その試練の残酷さを許すと心から信じていた。そして私は、彼らほど多くのことを知っているわけではない。
それ以外にも多くの話をしたが、ここにはすべてを書けない。あと少しだけ書いて、終わりにしよう。
私は明日、旅立つ。彼らは、ミレをこの旅に同行させたいという私の願いを前向きに受け取ってくれた。彼女がいなければ、私は試練を乗り越えることができなかっただろう。この文を読んでいるあなたが私の行動に興味を持つかどうかはわからないが、私は人間が追いつけないほど遠い場所へ向かうので、無謀な計画は立てないほうがいいだろう。
あなたはもしかすると、私とミレがあなたたちを見捨てて去っていくと思うかもしれない。その言葉が正しいかもしれない。しかし、これだけは残していく。これで十分だ。
万が一、私たちが経験したのと同じ試練が再び訪れ、棘のある言葉が再びあなたたちの文明の存続に絶望的な影を落とすとしても、ただ一つだけ覚えておけば、試練を乗り越えることができる。あなたたちも私のように克服できるはずだ。
棘を手に持ち、相手に向かって真正面から突きつけ、
上に持ち上げてから、下げて、180° = "ごめんなさい"