Information
Name: 月の真の真空
Author: ddfx
Rating: 30/34
Created at: Sat Apr 22 2017
特別収容プロトコル
SCP-2821はその活動や大きさの変化について常に一定の基準で監視されなければなりません。SCP-2821の収容室全体にガイガーカウンターとカメラを敷設し、その周囲0.5キロメートル以内に2つのミンコフスキー時空モニタを設置します。月面エリア-32からSCP-2821へ通じるトンネルは保全され、定期的に放射線検査を行います。月面エリア−32がガンマ線および崩壊同位体により汚染されることを防ぐために、鉛箔で覆われた2つのエアロックがトンネルの入り口と中点に配置されています。SCP-2821の収容室へと繋がる月面の穴の上のカバーは、カメラからの発見のリスクを減らすために月の表面に似せます。このカバーは周囲の表面の温度と合わせるために吸熱素材で作られていなければなりません。SCP-2821からのあらゆる種類の発信は、コミュニケーションである可能性を示す兆候とともに、レベル4/2821の研究員に直ちに報告しなければなりません。これらの発信を検出する非財団職員は尋問され、記憶処置を施されます。
説明
SCP-2821は真の真空1であると考えられている球状の異常空間であり、月面エリア-32から1.25kmの場所に位置する直径0.9kmの球状の洞穴の中にあります。SCP-2821のサイズは光速で不規則に変動し2、現在の直径は~0.55 kmです。SCP-2821に入る物体は、ランダムな間隔で変化する異常空間の範囲内で物理法則の影響を受け、多くの場合は破壊されます。時々SCP-2821内で物体が形成されたり移動したりすることが見られ、それらはSCP-2821-1実体と呼ばれます。時にはSCP-2821-1実体がSCP-2821を離れ、様々な放射性同位体や粒子に分解されることがあります。異常空間の中央にはSCP-2821-2と名付けられた1体の存在がいます。この存在は急激に点滅する色の塊として現れ、時々つる(tendril)を出します。また発見以来SCP-2821の中心にずっと存在しています。SCP-2821-2がこの異常の原因であるか、またはその拡大を防いでいるものと推論されています。
時々SCP-2821からの無線送信が検出されることがあります。無線送信の大部分は静的ノイズですが、一部には未知の人物の音声や多様なノイズが含まれています。これらの送信が発生する時間と長さはランダムですが、内容の一部には類似したテーマがあります。このことに関する調査が進行中です。
SCP-2821は月面エリア-32から月面エリア-13へのトンネルの掘削中に発見されました。トンネルは2つのサイト間の輸送手段として機能するはずでした。2015年4月13日、エリア-32から1.25kmを掘削した後に掘削設備の1つがSCP-2821を含む大きな洞穴に落下しました。この時点の洞窟の直径は0.8 kmであり、SCP-2821のサイズは急激に変動していました。続く調査と収容手順の開発の間、1日の間SCP-2821は直径0.3kmになり、その後現在の洞穴サイズである0.9kmに達し、月面までの穴が開きました。この時の調査はこれが真の真空であるという、現在支持されている理論につながりました。
もしSCP-2821が量子場理論により決定される速度で拡大を開始した場合、その異常空間に入ったすべての物体は新たな物理法則や化学法則に従うこととなり、VKクラス現実再構築イベント3が引き起こされます。光が地球から月に届くまでにかかる時間は1.3秒であるため(その逆も同様)、財団が何らかの行動を起こすことができる前に月と地球の両方が破壊されると考えられます。SCP-2821のサイズはランダムに変動しており、この状況はいかなる時でも発生する可能性があります。
VKクラスイベントを阻止するための適切な収容手段の開発が現在行われています。主要計画であるプロジェクト・ハイゼンベルグ - スティリアコスは、SCP-2821を強制的に一定のサイズに収めるか、あるいは無効化するためにスクラントン現実錨の改造を行います。計画の現在の問題としては、月面エリア-32へのデバイスの輸送、SCP-2821とデバイス間での未知の相互作用の可能性などがあり、これらにより収容状況の悪化または異常空間の拡大が引き起こされる可能性があります4。
補遺-1
下記の表はSCP-2821内で見られた物理現象の詳細であり、それぞれφ+番号が付けられています。この表には長時間続いたり重要である物理状態のみが載せられています。すべての記録された状態とさらなる情報を含む完全な文書は、文書SCP-2821-V1を参照して下さい。
補遺-2

準安定状態を表した図。この例では、1は偽の真空にあるヒッグス場、2は変移の境界にあるヒッグス場、3は新たに作られた真の真空にいるヒッグス場を表している。3の状態においてヒッグス場は(大域的に見て)最も低いポテンシャルエネルギーを持つことになる。
2016年9月15日、SCP-2821からの無線発信が検出されました。発信は4分間続き、それは静的ノイズ、複数の言語による声、様々なノイズから構成されていました。判明している使用された言語にはスペイン語、アイスランド語、イディッシュ語、スコットランド・ゲール語、オルトサン、エスペラントがあります。下記に大部分が翻訳されたこの発信を示します。英語への正確な訳語がない箇所やノイズ、不明な単語は括弧でくくられています。大文字の箇所は発信において大きな音の部分を示しています13。
[捕まった、牢に入れられた]
無があった、気を狂わせるほど
[恐怖、嫌悪]が[イルカの鳴き声]を留まらせた
彼らは錠を作り鍵を捨てた
[イルカの呼び声]は領域から去り[不明]へ戻った
[引き裂かれ、ぼろぼろになった]
仲間達はワイヤーに捕らえられ、血が流れ血が流れ血が流れ[ぼろぼろになった]
[1分間の静的ノイズ]
戻った故郷は混乱の中にあった
[イルカの鳴き声]の不在とともに現実は終わった
そしてその殺人者は私と私という存在を見つめ返す
[不明]
消費された、ばらばらにされた、離れ離れに破かれた [捕まった、牢に入れられた]
[不明]警備の犬は彼らを捉え、彼らの心を引き裂いた
肉が取り出され永遠に保存された
[直す、治す]
[1分間の静的ノイズ]
イエソドン(Yesodon)14、恐ろしい名前
そしてそれが殺されるとき
具現化した[不明]が倒れるとき
[工事現場に似た音] [規律、パターン]
[1分間の静的ノイズ。不規則に音量が変動する]
[イルカの鳴き声] 叫ぶ
イエソドンが聴く
[発信の最後まで静的ノイズ。波の音に似たノイズが重なる]
量子場理論では、真空とは可能な限りエネルギーが低い空間のことである。量子場が依然として存在しているのであれば、可能な限りエネルギーを取り除くことで偽の真空を作ることができるが、それは大域的に見て最小なエネルギー状態ではない。大域的に最もエネルギーが低い状態が真の真空であるが、そのような状態に(偽の真空から)到達するためには(エネルギー)障壁を乗り越える必要がある。このため偽の真空は準安定状態であり、特定のエネルギー条件が満たされた場合にその障壁を超え、最も低いエネルギーの状態へ「落ちる」ことができる。トップ・クォークやヒッグス・ボソン(粒子の相互作用に質量を与えるヒッグス場の拡張)の質量の観測に基づき、我々の宇宙は安定性の境界に位置する、長時間その状態を保っている偽の真空に存在しているという理論が立てられている。もしヒッグス場において量子トンネル効果(粒子が障壁の「トンネル」を抜けること)のようなイベントが発生すれば、ヒッグス場が最も低いエネルギー準位に到達し真の真空を作り出す可能性がある。真の真空はあらゆる方向に高速で拡張する泡となり、それに接触したあらゆるものを破壊すると考えられている。また真の真空の内部は現在の宇宙法則と全く異なる物理法則や化学法則が成り立つと考えられている。
要約すると、真の真空とは可能な限り最もエネルギー準位が低い空間のことであり、光速で拡張する。その領域では現在と完全に異なる物理法則や化学法則が成り立ち、その内部へ入ったあらゆるものは破壊される。