SCP-2896 : 眠る、あゝおそらくは(自由の)夢を見る

Information

Name: 眠る、あゝおそらくは(自由の)夢を見る
Author: C-Dives
Rating: 13/13
Created at: Tue Feb 14 2017
アイテム番号: SCP-2896
オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル

SCP-2896の現在の出現地点はサイト-84の標準的人間収容室内部に位置しています。SCP-2896の時間的変動性質により、SCP-2896の効果的な収容は、時間軸上の未来に位置する財団のための実効的文書記録と、SCP-2896の収容状況の変更に関する現状維持に依存しています。

SCP-2896は通常ならこの時間的位置の範囲内に存在しないので、能動的収容は基本的に不要です。しかしながら、SCP-2896が時間軸上に存在する場合、収容のためには非-現実改変系異常人間のための標準的収容プロトコルで十分と考えられます。

SCP-2896の収容文書記録の最新版コピー1部が、発見されている過去の収容文書全てと共に、安全保管ロッカーに維持されるべきです(詳細は補遺を参照)。SCP-2896に関連する詳細情報、またはその他の発見された歴史的記録のコピーも同様に前記ロッカー内に保管されるべきです。未来の時間軸上に存在する財団が、過去の全ての事例と合わせてSCP-2896の適切な収容手順を維持できるようにするためにも、これらの情報が厳重に保管されることは重要事項です。

説明

SCP-2896は、本名をウラジーミル・ストラニクという40歳の白人男性であり、非局所的な時間性質を帯びています。即ち、SCP-2896は時間軸上の異なる地点に移動することが可能です。

SCP-2896はこの異常性質を意識的には制御できておらず、睡眠中に無意識下で活性化させることしかできません。この結果、SCP-2896はREM睡眠中の不特定な時点で、別な時間的位置に移動することになります。SCP-2896はどの時間的位置に自分が出現するかを制御していないようですが、現行のそれも含め、最も頻繁に現れると思われる幾つかの時間軸が存在しています。

現在、どのようにしてSCP-2896が本来の時間的位置から自らを解離させられるのかは不明であり、SCP-2896は異常性質が発現したのは比較的若い頃だったと主張しています。SCP-2896は自身や本来存在していた時間軸についてこれ以上の情報を明らかにすることを拒絶しており、その起源を特定するための更なる試みは必要と見做されませんでした。

財団によるSCP-2896の収容は、18~19世紀における財団前身組織の全米確保収容イニシアチブ(ASCI)、およびその間の幾つかの仲介団体にまで遡ります。そのため、SCP-2896の現在の封じ込めは、現時間軸上の財団・過去時間軸における財団・そして恐らくは未来の時間軸上に存在する財団の間での努力の調整に依存しています。SCP-2896が移動することが判明している過去の時間的位置での収容文書のリストは記録保管のため、また同時にいずれSCP-2896を収容するであろう将来の財団のための証言としても機能させるため、以下に収録されています。

直接調整の不可能性を踏まえて、上記収容プロトコルで述べたように、単純な現状維持による合理的アプローチが困難を最小限に抑える手段として確立されています。加えて、SCP-2896は時間的には非局在性であるものの、空間的にはそうでないことが分かっています ― 言い換えると、SCP-2896は時間移動する時、同じ場所に留まったままです。そのためSCP-2896の収容室は、SCP-2896が収容中のサイトを財団が積極的に利用している最古の記録日以降、それほど改装されていません。

SCP-2896は財団職員に対して激しい敵意の兆候を幾つも示しており、この反応は恐らく、別な時間軸上の財団から受けた扱いとの繋がりがあると思われます(下記参照)。

歴史的収容文書/SCP-2896の獲得

以下の文書群は、サイト-84の現在地の近くに埋められていたASCI時代の保管ロッカーから発見されたものです。特筆すべき点として、これらの文書は、過去全ての時間軸における財団がSCP-2896を収容していたのと同じ場所に空の収容室を維持することの重要性を強調した情報を含んでいました。

以下はロッカー内で以前に見つかった全文書をまとめたものであり、財団情報部が断定できる限りにおいて大まかな時系列順に並べられています。これらに含まれる情報の信憑性は個別検証されておらず、また書かれている内容の検証は不可能です。

身元不明の医師による証言、植民地時代の後期と推定

昨晩、地元の町民から、私が長年の医療経験で見てきた中で最も興味深い症例の報告が入った。問題の患者には、睡眠中に頻繁に姿を消すという奇妙な癖がある。

一見ごく平凡な夢遊病のように思えるものの、“蛇尾亭”で彼と同宿しているという男は、その人物が彼の目の前で、あたかも大気に溶け込むかの如く、ベッドから消滅したのだと語気荒く私に請け合った。

普段の私ならこれを単なる民衆ヒステリーとして片付けただろうが、少なくとも他に4人がこの声明の信憑性を誓っている。単なる偶然以上の何かがありそうだ。

もしその男を自力で追跡できるならば、彼の研究をしようと計画している。私がまず最初にこの現象を証明できるならば、きっと“珍品と過ぎ往く幻想の研究の為の王立財団”が興味を寄せてくれるだろう。

全米確保収容イニシアチブの文書、1863頃

品番: 2896-012

分類タイプ: 人間 / 潜在脅威的

ASCI収容プロトコル: 現象2896-012は現在、抑留キャンプ・ジェファーソンに維持されている独房に拘留中である。ASCI職員は現象2896-012が常時そこに存在するわけでは無いことを念頭に置き、対象が独房内に位置している場合は積極的な警戒を維持しなければならない。

現象2896-012に係る全ての有効情報は下記の指示に則り、当該現象に係る他全ての発見された情報と共に、看守長の事務所に保管された金庫に収容されるものとする。

解説: 現象2896-012は、ウラジーミル・ストラニクという名前の白人男性であり、睡眠中に歴史上の異なる地点へ移動する怪奇能力を有している。

地元の調査により、暫く前から当地のゴシップおよび法螺話の源泉であったと思われる、“消失人間”についての数多くの物語が明らかになった。これら全ては現在から遡ること40年前のものだが、当該現象は問題の物語に登場する人物の外見描写と大まかに一致する。

現象2896-012はこの能力を制御できないと主張しており、厳しい尋問の結果、この声明は恐らく真実である可能性が高いと結論付けられた。尋問によって2896-012が移動したと主張する他時代についての更なる情報の開示を強制することはできなかったが、さらに高度な尋問手段が推奨され、承認を待っている。

注記: 現象2896-012が他時代へ移動した上でなお我々に拘留されている期間に戻って来るという事実は、此処ではない何処かで、過去もしくは未来におけるイニシアチブの派生団体が当該現象の拘留に最善を尽くしていることを意味している。同じ神より賜りし使命を分かち合っているように思われる以上は、我々がこの現象に対してできること、その他我々が把握している全ての物事についての可能な限り多くの情報を残すことによって将来の人々を支援するという役割を果たすのが公正であると考える。それ故、私は我々が現象について得た全ての情報がここにある私の事務所に確保され、将来的参照のために安全に隠されることを望むものである。

懲戒録: 現象2896-012は現在まで計3回の逃亡を試み、別々の期間に計3回の公開鞭打ち刑に処された。次回脱走を試みた場合は、鞭打ち30回と1週間の配給食削減が行われる。戦時下での罰則は、忠誠の対象が不明である全ての異常存在に適用される。 ― ジョンソン看守長

サーカスのチラシの転写、1930年付:

寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい!

ご覧あれ! 驚天動地の消失人間!

眠っている間に身体が揺らいで姿を消す男!

変人奇人がもっと沢山! おいでませ、カールソンの奇怪不思議サーカスへ!

注: 以下のメモはチラシの下部に書き殴られていたものです。

ふざけてんのか、ジョニー? お前の新しいフリークショーは正真正銘のクズだ。左翼かぶれの乞食が眠って姿を消すのなんか、誰がわざわざ金を払って見に来るかよ。俺の息子だってもっとマシな手品ができるぜ。とっととフリークの入った檻を置いて失せろ、俺に見せるモノホンの興業を身に着けてから帰ってくるんだな。それとこの野郎にはホースで水を掛けといてくれないか? 臭くてかなわん。

財団確保収容プロトコル、1952年頃

注: 現在の財団文書とは異なる内容は便宜上、青で強調表示されています。

アイテム番号: SCP-2896

オブジェクトクラス: Euclidean-Red

特別収容プロトコル: SCP-2896の現在の出現地点はサイト-84の標準的人間収容室内部に位置しています。SCP-2896の時間的変動性質により、SCP-2896の効果的な収容は、時間軸上の未来に位置する財団のための実効的文書記録と、SCP-2896の収容状況の変更に関する現状維持に依存しています。

SCP-2896は通常ならこの時間的位置の範囲内に存在しないので、能動的収容は基本的に不要です。しかしながら、SCP-2896が時間軸上に存在する場合、Euclidean-Redクラスの収容条件を若干変更したものが有効化されます。詳細は以下の通りです。

1). SCP-2896は、他のEuclidean-Redクラス異常存在との接触を決して許可されません。
2). 忠誠保安委員会による特別審査中である、もしくは他の理由で敵対組織への忠誠心が疑われるスタッフは、SCP-2896との接触を許可されません。
3). 潜在的に反逆的内容と見做され得る書籍類は、SCP-2896に閲覧させることが認められません。
4). SCP-2896に関わる全てのスタッフは毎月、忠誠保安委員会の審査を受け、SCP-2896による潜在的な共産主義的影響を受けていないことを立証しなければいけません。

SCP-2896の収容文書記録の最新版コピー1部が、発見されている過去の収容文書全てと共に、安全保管ロッカーに維持されるべきです(詳細は補遺を参照)。SCP-2896に関連する詳細情報、またはその他の発見された歴史的記録のコピーも同様に前記ロッカー内に保管されるべきです。未来の時間軸上に存在する財団が、過去の全ての事例と合わせてSCP-2896の適切な収容手順を維持できるようにするためにも、これらの情報が厳重に保管されることは重要事項です。

また、当該異常存在のEuclidean-Red性質に鑑み、財団はアメリカ政府による現在の指令に基づいて、SCP-2896が持ち得る動機、その起源、および異常性質が共産主義に由来しているか否かを断定するために毎週の心理テストと尋問を行います。

説明: SCP-2896は、本名をウラジーミル・ストラニクという40歳の白人男性(ロシア起源と推定)であり、非局所的な時間性質を帯びています。即ち、SCP-2896は時間軸上の異なる地点に移動することが可能です。

現在、どのようにしてSCP-2896が本来の時間的位置から自らを解離させられるのかは不明であり、能力の発現が若い時期に起こったという点を除いては、度重なる尋問でもSCP-2896から情報を抽出することは出来ていません。

財団によるSCP-2896の収容は、18~19世紀における財団前身組織の全米確保収容イニシアチブ(ASCI)、およびその間の幾つかの仲介団体にまで遡ります。そのため、SCP-2896の現在の封じ込めは、現時間軸上の財団・過去時間軸における財団・そして恐らくは未来の時間軸上に存在する財団の間での努力の調整に依存しています。SCP-2896が移動することが判明している過去の時間的位置での収容文書のリストは記録保管のため、また同時にいずれSCP-2896を収容するであろう将来の財団のための証言としても機能させるため、以下に収録されています。

直接調整の不可能性を踏まえて、上記収容プロトコルで述べたように、単純な現状維持による合理的アプローチが困難を最小限に抑える手段として確立されています。

Euclidean-Redステータス指定: 1952/03/04 財団アメリカ支部が現時点での現地政府指令に準拠していることを受け、SCP-2896はEuclidean-Red実体に指定され、敵対的な他国政府/イデオロギーに属する破壊工作員の疑いがあるとして特別審査の対象となっています。

SCP-2896が持ち得る動機と起源を確認するために毎週の特別尋問が予定されており、現在は潜在的な破壊工作が行われないことを確実にするための最も効果的な尋問手段を断定するべく、忠誠保安委員会の審査を受けています。

ガブリエル・ロドリゲス博士によるKeterクラス再分類申請

以下は、SCP-2896の現任の監督職員、ガブリエル・ロドリゲス博士による覚え書きです。

2015/03/05に行われたデジタル化以前の財団記録に対する内部査察が示すところによると、1963/06/07、サイト-84から凡そ30マイル離れた町の地方新聞に、地元の結婚式の真っ只中にSCP-2896と一致する容姿の男が唐突に出現したという内容のタブロイド記事が掲載されている。結婚式についての説明は問題の町で定期刊行されていた新聞の掲載内容と一致しており、更にタブロイド記事に添付された写真にもSCP-2896らしき姿が映り込んでいた。当時の財団は更なる調査のために間違いなくエージェントを派遣しているが、問題の男に関するこれ以上の情報を得られていない。

我々が今直面している問題は、新聞で言及されている人物が私の疑念通りSCP-2896であったと仮定した場合、この出来事が将来的に起こるのか、過去に起こったのか、或いは我々の気付かないうちに現在進行形で起こっているのかが全く分からないという事だ。

ここでは、私の言う“過去” “未来” “現在”という用語をもっと修飾することが重要になる。まず、我々が理解している通り、歴史の自然な流れという時間軸が存在する。 そしてもう一つ、SCP-2896だけが経験している時間軸も存在している。

SCP-2896がこの1953年の出来事を、現在の財団による収容以前に既に経験しているとすれば、我々はSCP-2896がまだ我々自身を含む複数の時間軸上の財団によって有効な収容状態に置かれていると仮定できるだろう。

だが、もしもこの出来事が我々による現在のSCP-2896収容以降に発生するなら、それは大問題だ。まず第一に、どういう理由にせよ、何処かの時間軸における財団(我々かもしれない)が異常存在を収容下から30マイルも逃亡させているというのは良い事であるわけがない。しかし、それよりも私の精神を追い込んでいるのは、これが財団に及ぼす可能性のある因果関係の脅威だ。

SCP-2896が収容を成功裡に逃れたとすれば、それは何処にでも何時でも、未来にも過去にも、今現在の時間軸にも出現する可能性があり、あまり人道的ではなかった時代の前身団体や後発団体からの封じ込めによって財団や関連組織に対する明白な憎悪を抱え込んだ敵対存在が野放しであるということを意味している。もしSCP-2896が財団の遥か昔の前身団体を訪れ、我々が暮らす現在の現実性に破滅的帰結を齎すのに十分なだけ(バタフライ効果を想像してほしい)彼らの活動を妨害することができるとしたら? きっと、あれは財団に対して直接何かを実行する必要すらないだろう。最小限の行動さえもが宇宙全体を改変する可能性がある。

だが勿論、これが重要ではない可能性があることも付け加えておく。もしかしたらSCP-2896は何処かの時間軸において既に死亡しているかもしれないし、あれが取り得るどんな行動であれ ― 時間的表現をするなら ― 既に“織り込まれている”かもしれない。この質問に答えを出したくとも、我々は時間がどのように作用するかをまだ十分に把握できていない。時間異常部署がこれに取り組んでいる最中だ。

いずれにせよ、我々なりの警戒を続けつつ、下手を打つのが我々の時代の財団で無いことを、そして別時代の関係各位が余りにも酷い下手を打たないことを願う以外に、状況を修正するために可能なことは殆ど無い。勿論、誰かが何かやらかすことを例の新聞記事が“運命付けて”しまったとすれば、何の足しにもならないがね。

私の頭を一晩中離れないのは、“もしSCP-2896が何らかの時間的災害を引き起こしたら”ではない。

“もし既にそれが起こっているとしたら”なんだ。


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