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Name: 束の間の不死者たち
Author: fumeinadebaisu
Rating: 12/12
Created at: Fri Sep 23 2016
[文書保管係による注: デジタルストレージに転写されたオリジナルの文書には、このページの上部に“手紙から始めろ”と読み手に指示する手書きの注釈が存在しました。これはここで閲覧できる文書2904-Aを指しています:
文書2904-A
[文書保管係による注: この手書きの手紙はオリジナルの機動部隊パイ-20オペレーター候補者のためのブリーフィングパックに含まれており、文書SCP-2904の導入部の役目を果たしていました。デジタルアーカイブでの保存のために転写されています]
1981年6月19日
候補者へ
これを読んでいるなら、君は選択肢を与えられたということだ。
こんにちは、私は███████████████。私は君が誰か知らないし、知ることもない。君がこれから経験するだろうことを知っているふりもしない。私が知っているのは次に何が起こるかだけだ。君が何をすべきか理解するのを手助けすることになっているが、あいにく私はアドバイスが得意な方ではない。代わりに、私にとってそれがどのようなものかを伝えようと思う。それがどう機能するかを。その後は目の前の書類にサインするも、何であろうと己に存在する他の選択肢を選ぶのも君次第だ。
始めよう……初めからではない。本当の物語は始点を持たないものだ。どこかから始めよう。以前。これが私だった:
目を開く。居眠りしていたに違いない。日差しが背中に温かく、肩越しに机へと広がっている。私の視線は机の左側に引きつけられた。カレンダーは金曜であり、時計は午後2時を指している。思考することなく、自動的にチェックする。
金曜日の午後には予定を入れず、週末に仕事を食い込ませないために未処理の事項を片付けていくのが常だった。しかし確信はなかったので、電話を取ってティファニーに電話した。
「やあ、ティファニー」
彼女が応答するまでに短い間があった。「もしもし、エージェント・████████、ご用は何でしょう」
「スケジュールをチェックして、午後になにか予定が入っていたら教えてくれないか」
「███学院部長との今月の生産高の割り当てに関するミーティングだけです」
「ああ、もちろん。ファイルはあるかい、ティファニー?」
「今朝お届けしました。一番上の引き出しにお持ちだと思いますが」
「ああ」一番上の引き出しを開けてファイルを取りだす。「うん、ここにある。ありがとう、ティファニー」これもシステムを決めておかなくちゃな。
ラジオをつける。ブームタウン・ラッツの_哀愁のマンデイ_1がコーラスに差し掛かり、合わせてハミングする。
よくあることだろうか?おそらくは。君が今いる場所に至るには様々な道がある。どれもいいとはいえない。それが私が今ここにいる理由だ。君には全く知る必要がないと思うが、しかしもし知れば、何故私が決断したのかも分かるだろう。君にとって好ましい選択かどうかも。
君はおそらく不思議に思っていることだろう。「引き受けたら何が起こる?どんな感じなんだろう?」最も誠実な答えとしては、私は知らない。君も知ることはない。どんな感じであるか教えることはできるものの、我々のどちらも本当の意味で知ることはない。だから今度は教えよう。以後の話を。
私はこの次のパートを書く、テープに録音された自分の声を聞きながら。己の声をした他人を。彼が何を経験しているか教えてくれるので、私も君に教えることができる。彼が言うにはこうだ:
私は平穏だ。私は脅威をチェックする。1時と4時の方向にスーツを着た男がいる。彼らはバッジをつけているので、私はリラックスし、1時の方向にいる近い方の男に私の右手の甲のカードホルダーに入ったカードを変えさせ続ける。彼は私の低下した知的能力に関してなにか侮辱的なことをつぶやいた。私はそれに関して何もしないという意識的な判断をした。ブームタウン・ラッツの_哀愁のマンデイ_が私の後ろのどこかで鳴っているので、私は私が活動状態ではないということを知っている。もう1人の男、年上の方は耳に片手を添えている。彼はしゃべる:
「咽喉マイクチェック。こちら準備完了」
私は私が自分の思考をささやいていることに気付く。思考することなく、自動的に起こる。1か月間の自動口述の条件付けの後ではこうでなければならない。私は彼の声を識別する。エイブラハムズだ。彼の外見はひどい。年取って。擦り切れて。私はこれを予期すべきと知っているが、それでも彼にとっての時の流れの残酷さを知るたび少し驚く。
「お気遣いに感謝するよ」彼は言った。「結局のところ、誰も時間からは逃れられない」彼は私の方に手を置き、200ヤード先の大きな家を指差した。「標的はあの中にいる、█████。さあやってやれ」彼は微笑んでいるが、その陰に何かがある。私はそれも予期すべきと知っている。それは憐憫の情だ。私は家に向かって歩き、ブームタウン・ラッツは薄れて聞こえなくなる。それはすぐに、家から流れ出る地響きめいた低いベース音に取って代わられる。私は正面のドアから入る。
私は平穏だ。私は脅威をチェックする。私の目の前の床にティーンエイジャーが横たわっている。彼は意識がなく、絞め落とされる間に顔をひどく殴られたように見える。私の手の痛みから判断するに、それは私の仕業だろう。他には誰もいない。
私は私の手に目線を落とす。左手は空いている。右手の甲のカードホルダーには1枚のカードがある。それには平坦で光沢のある円形の物体が描かれており、その下には“コンパクトディスク、音楽記憶装置”とある。
私がいる部屋は不法占拠された応接間のように見える。不潔なマットレスがそこらじゅうに投げ散らかされているのを除けば、床には何もない。壁紙は筋状に剥がれ、どこも汗と湿気でひどく臭う。ここで“コンパクトディスク”に見えるものは見当たらず、興味深い物も見当たらない。私は背後のドアに向かって歩く。上り階段があり、上階から音楽が聞こえる。私は上る。
私は平穏だ。私は脅威をチェックする。私は戸口に立っていて、部屋の中、12時の方向に十代の少女がいる。彼女は私の方に向き直りつつあり、そして刃物を持っている。彼女は若く、早い。彼女は躊躇しない。私には銃を抜く猶予がない。彼女はまっすぐ私の方に来てしまい、そして彼女は私が30年間そうであったより素早い。彼女はまた不器用でもあった。訓練を受けておらず、薬物か何かのせいでうつろな目をしている。私はこれに対して備えができている。私は彼女の刃物を持つ手を私の前腕で大きく逸らした。刃物は戸枠を打ち、彼女の手から転がり落ちた。彼女は部屋の奥まで駆け抜け、そして私に向かってくる、叫びながら。私は手を伸ばし、私の目に向かって伸びる手をつかむ。私は翻り、彼女の勢いを私の肩越しに彼女を投げるのに活用する。彼女は戸口の向こう側に飛び、向かいにある階段を跳ねるように落ちる。彼女はぎこちなく中ほどで止まる。
私は彼女をこのままにしておくわけにはいかないので、階段を下りて彼女の上に立つ。彼女の片腕は明らかに折れて、ほとんど意識がないように見える。私は片足を持ち上げ、注意深く計算された勢いで彼女の頭を踏みつける。彼女は生き延びる見込みがあるだろう。
私は私の手に目線を落とす。左手は空いている。右手の甲のカードホルダーには1枚のカードがある。それには平坦で光沢のある円形の物体が描かれており、その下には“コンパクトディスク、音楽記憶装置”とある。私は少女が待ち受けていた部屋へ階段を戻る。音楽はこの部屋から聞こえている。それの何かが私の意識の片隅を強く引き付ける、まるで暗い部屋の中で誰かに名前を呼ばれたように。しかしそれは弱い。それは私に付け入るすきを見つけられないまま流れ去っていく。
部屋の隅に、巨大なスピーカーにつながれた、私が今まで見た中で最小のステレオシステムがある。私はそれの側に屈みこみ、“コンパクトディスク”を取りだす方法を探る。小さなボタンにイジェクトマークがあったので私はそれを押す。音楽がこだまする沈黙を残してすぐに消える。光る物体を載せた小さなトレーがステレオシステムから滑り出てくる。私はそれをカードと比較してチェックし、それは同じに見える。私はそれを取り、私のベルトにあった緩衝材付きケースに仕舞う。私はケースを左手に持ち、脱出口を探す。
私は平穏だ。私は脅威をチェックする。私は9時の方向に外への戸口と思われるもののある玄関に立っている。ここに脅威はない。私は私の手に目線を落とす。左手は太い大文字で“目的(objective)”とプリントされたケースを持っている。
アイテム番号: SCP-2904
オブジェクトクラス: Safe
私は建物を去るためにドアの方を向く。私の背後から物音がする。私は振り返り、2人の十代の少年が建物の奥から玄関に現れつつあるのを見る。彼らの1人は野球バットを持ち、もう1人はキッチンナイフを持っている。彼らは混乱し、怒っているように見える。彼らは玄関を私の方へ突進してくる。私には片手しか使えないので、私は銃を抜く。私は片手で撃つので、それを価値ある一撃とするために、注意深く射撃の準備に時間を取る。彼らは近づく。そして私は1人目の少年の胸部に2発当てる。ウェブリー2が私の手の中で跳ね上がって私の手を高く持ち上げさせ、私は次の少年の方へ下げるべく格闘する。彼は彼の友人の身体にさしかかり、足元に気をつけるのに精いっぱいでリボルバーが5フィート先から彼を狙っていることに気付かない。私はさらに2発撃つ。1つは彼の胸部に当たり、もう1つは彼の首を撃ち抜く。彼は崩れ落ち、ひび割れたタイルの上で滑ったのち動かなくなる。2つの身体から撒かれた血液が広がっていく。私は待つ、聞きながら、見つめながら。私はアドレナリンで震えている。他に動くものはない。私は向きを変え、建物から出ていく。
私は平穏だ。私は脅威をチェックする。12時と3時の方向にスーツを着た男がいる。彼らはバッジをつけているので、私はリラックスし、年上の方の男に私の左手からケースを取らせる。私にはブームタウン・ラッツの_哀愁のマンデイ_が2番にさしかかるのが聞こえるので、私は私が活動状態ではないということを知っている。若い方がよそよそしく私を見ている、彼が恐れてでもいるかのようだ。私には理由を知る手段はない。彼はためらいながら私をバンの後部座席に導く。彼は私がシートベルトを着けるのを待ち、私にヘルメットを差し出す。私はそれを私の頭に載せ、暗闇の中でリラックスしながら音楽に合わせてハミングする。
あまり魅力的とは思えないだろう。ならなぜ君はこんなものに志願したのか?これが理由だ:
もし君がそこに座ってこれを読んでいるなら、つまりそれは君がある種のことをやってきた人間だということだ。おそらく今もそうだろう。そうした事柄の一部はあまりいいものでないし、機会があっても語りたいものでもない。君はとにかくやってのけ、セラピーを受け、薬を飲み、必須の心理的負担による休暇をとり、再認定されて次の仕事のために戻ってくる。重要なことだと思ったからやったのだろう。せねばならないことだと。
問題は長続きしないということだろう。限界があり、終わりが見え始め、しかもそれから時間が経っている。まず“軽めの任務”に割り当てられ、事務方にされたと気付く。何が君をここまで追い詰めたか皆に知られる前の話だ。もし誰も気付かずとも、君の持ち時間は尽きている。そうじゃないか?
それが君に与えられる機会だ。つまり、せねばならないことをしつづけるための機会だ。以前と同じではない。同じではいられない。後戻りはできない。しかし価値のあるものだ。もしかしたら君にはぴったりかもしれない。
人生を与える訳ではないが、かといって死を与えられる訳でもないと分かったと思う。賢明な選択を願う。
敬具
████████
機動部隊パイ-20、オペレーター・███████████████
特別収容プロトコル
使用を要請された時を除き、SCP-2904は常時サイト-19の深シグマ保管室に収容されます。件の保管室外では、交代要員名簿から無作為に選ばれた保安人員を最低でも3人伴わなければなりません。
機動部隊パイ-20の隊員が任務として要請された場合を除き、SCP-2904を素手で扱ってはいけません。詳細については以下を参照してください(レベル3/2904およびレベル4機密)。保管室内にある場合を含め、使用の最中以外は備え付けの厳重保管輸送容器に収容されたままにしなければなりません。
SCP-2904のさらなる試験はすべて1988/10/20付のO5評議会の命令により禁止されています。以前に作成されたSCP-2904-1実体に関する試験は標準的な研究請求手順により利用可能になるでしょう。
説明
SCP-2904は4.982センチメートルの長半径を持つ扁球です。タングステン2.3%、鉄0.6%、炭素0.4%、未確認のエキゾチック物質0.3%を含むオスミウム合金でできています。質量は10.075±0.347キログラムです。SCP-2904の測定質量におけるこの変動は、月の恒星時による公転周期(27.3日)を変数にとる正弦関数に沿って変化しているためです。月が地球から見て銀河の中心に直列しているときに最も重くなります。オブジェクトと月の関連性およびその有無はこれまでのところ未確定です。
SCP-2904の極の1つには3ミリメートルの深さのへこみあるいはくぼみがあります。1ミリメートルの深さの溝あるいは連続したくぼみがこのくぼみから発し、オブジェクトの表面で複雑な経路を描きます。この溝は、交差およびループを持たず、くぼみに溝が接続するのは1点のみであるにもかかわらず、始点と終点が極のくぼみになるという異常な性質を有しています。これはSCP-2904が3次元空間に貫入した高次元のオブジェクトであることを含意します。
SCP-2904の主要な異常効果は、生命のある実体がオブジェクトに直接接触し、極のへこみからへこみまで表面の溝を完全にたどることで活性化します。この手順を実行した人間は、完了直後から数秒経過するまでの間、オブジェクトが触るのに苦痛なぐらい熱くなり、心臓のように脈打つか鼓動すると報告します。熱と脈動は急激に衰える前に、報告者の全身に拡大します。これまでのところ、観測機器はオブジェクトと暴露された人物の双方において、この感覚を構成する温度またはサイズの変動を検出できていません。SCP-2904が活性化されたときに直接接触していたすべての実体は、オブジェクトの異常な効果に暴露します(以降SCP-2904-1と呼称)。
SCP-2904-1実例は以下の性質を示します:
これらの変化は、以前考えられていたような改変された生物学的特性によるものではなく、反因果的効果により引き起こされます。SCP-2904-1実例が肉体的、あるいは精神的に変化した際は常に、暴露の時点の状態に戻されます。解明不十分な理由により、精神の巻き戻しは身体的巻き戻しと比較してかなり小さいタイムスケールにおいて行われます。393秒以上新しい情報を保持できたSCP-2904-1実例は記録されていません。
SCP-2904-1実例は、同種の実体を殺害するような大概の手段によって未だ殺害可能であることは留意すべきです。巻き戻し効果は死後も継続します。十分な時間が経過したのち、生命反応が戻ります。しかしながら、このようにして死んで蘇生した全SCP-2904-1実例はそれ以降、覚醒することのない昏睡状態にとどまっています。
発見
SCP-2904は1953年にジャンムー・カシミール州、スカルドゥのおよそ██キロメートル北にある発掘現場から発見されました。この場所はSCP-1726により、この場所がダエーワにとって重要であるという情報が得られた後に発掘されました。この発掘現場は他の場所と違い、予想されたダエーワの文化遺物と同様にダエーワではない居住者の痕跡を含んでいました。
SCP-2904は発見された遺物の中心的集中地点から300メートル離れた、半ば崩壊した地下室から発見されました。オブジェクトは緻密に細工の施された石、激しく腐食した銅の断片、酸化鉄の残留物からなるがれきに埋まっていました。SCP-2904の近辺で見つかった遺物は典型的なダエーワのものと様式において明確に異なり、非ダエーワの起源をもつものと考えられています。
このテストログは、私の要望にわずかでも影響力がある限りはブリーフィング資料の一部であり続ける。私の後継者に対しては、自明であることを期待しているいくつかの理由のために、これを今のままにしておいてくれることを平に希う。これは学術的価値のためではなく、訓話として保存されているのだ。考えなしに科学的手法をとっては、己の行為の帰結に直面することになる者たちに用心させるためだ。 — 1943年6月、サイト-19研究監督補佐、ハロルド・ダネルム
試験番号
2904-2
日付
1942年11月11日
被験者はアイダホ州、██████の████████████なる人物。研究のために連邦警察の勾留下から財団に移送された。
実験開始:
被験者は鋼鉄製のテーブルの上にSCP-2904が配置されたテストチャンバーに導入される。
被験者
それで、こいつを持って溝にそって指を動かしゃいいんだな?
試験統制官(Control) (スピーカー越しに)
そう、その通りです。やってくれますね、被験者?
被
オッケー。んでこれは……これは俺に何もしないよな?ちょうど宿舎の連中が試験であるかもしれねえ話をしてて、それで —
試統
緊張しないで、これはそのようなものではありません。あなたは無事でしょう。
被
ほほう。そんじゃさっそく始めようぜ。[被験者はSCP-2904を拾い、極のくぼみに触れる] こうか?
試統
合っています。次は溝を終わりまでたどってください。
被
朝飯前だぜ。[被験者が指を溝にそって走らせる] 今んところ上々だな。[被験者は溝の終わりに到達する] ふん。なんかあるかと思ったぜ。
試統
素晴らしい。次はあなたの状—
被
くっそ!あちぃ![被験者がSCP-2904を床に落とす。オブジェクトは損傷を受けていない。] 何しやがった?体の_中から_熱いぞ!これじゃ連中の話どおりじゃねえか。俺はどうなってるんだ?[被験者は頭を抱え、小声で呟きながらテストチャンバー内を往復する。]
試統
落ち着いて。そのうち良くなります。[被験者は試験統制官を無視する。]
被
[被験者は立ち止まり、スピーカーのそばの壁に向かって話す。] これから俺に何が起こるんだ?死ぬのか?あいつらはこういうことが起こるって言ってやがった。聞いときゃよかった。[被験者は頭を抱え、小声で呟きながらテストチャンバー内を往復する。]
[被験者は試験統制官が彼を落ち着かせることをあきらめて試験を終了するまで、さらに3度この循環を繰り返す。]
2904-1-2(被験者は現在この呼称で知られる)は未だに財団の勾留下にある。この文書の改訂版を用意している現在時点で、2904-1-2は63年間このパターンをわずかな変化のみで繰り返し続けている。 — 2005年12月、SCP-2904主任研究者、██████████████
ミーム災害、認知災害および類似事象に関する委員会による指令A120873、1973年8月12日付
本日、O5評議会により当委員会に与えられた権限において、“祈誓者たち”として知られることになる機動部隊パイ-20の結成が命じられます。この新しい機動部隊の結成はこの委員会の目標と方針にかなうものであり、すなわち; 財団に対して増えゆくミーム災害、認知災害およびその他関連した現象への対抗手段を与える道具を、手続きを、手法そして知識を提供するものです。
当委員会はここにジェフリー・コボルム(Cobholm)博士(現在は科学顧問補佐)を新たな機動部隊の司令官として任命します。実現可能な最短の期間で機動部隊パイ-20を運用可能状態に移行させるべく、コボルム博士には人員と物資の徴用を行うために十分な権限が与えられます。
基本的な機動部隊パイ-20の構成は以下のようになるべきです:
部隊に主たる作戦遂行能力を与える20人のオペレーター。オペレーターは幅広いミーム災害、認知災害および類似事象に対する高度な抵抗力または免疫を与えるSCP-2904に暴露させられます。オペレーター候補者は、痴呆ないし類似の診断により、この人員割り当てにより彼らの生活の質が向上すると考えられる財団のフィールド作戦人員からのみ選ばれます。オペレーター選択と準備に関するさらなる詳細は、文書2904-B-12を参照してください。
この指令は財団機密公告部門により、すべてのレベル4人員に配布されます。この機動部隊による介入を必要とする状況を特定、介入を要求、あるいは情報路を確立する手続きに関するさらなる情報は後の伝達でなされます。
報告F011114c、機動部隊パイ-20作戦監督、2014年11月1日
この文書は報告F011114の実施要領です。2014年9月12日に承認済み任務において発生した、機動部隊パイ-20のオペレーター#7が関わる事件に関連する背景情報を含みます。また、事件についての調査結果の概要も含まれています。完全な詳細については報告F011114を参照してください。
オペレーター#7の作戦録音からの抜粋(時系列順):
すべては静穏だ。状況確認。近辺に動きはない、緑信号。私は巨大な、コントロールパネルと瞬く光の複雑な網を表示して輝くディスプレイで満ちた工業施設の部屋にいる。渦巻く色のパターンを表示するスクリーンがある、まるで虹色の魚の群れのようだ。それは私の目を眩ませる。私は顔をそむける。私は今は気分がよくなる。
私は私の左手を見下ろす。それは空だ。私は私の右手を見る。私の手袋の甲側には小さなスクリーンがある。それはコントロールパネルの絵を表示している。私はあたりを見回す。ドアの向かいにあるパネルの1つが絵と一致する。私はそれの方へと動き、見下ろす。スイッチとスライダーとタイプライターのキートップが並んでいる。さらなる指示を得る時だ。
私は絶え間ない自動口述のつぶやきから声を上げる。"コントロール、こちらオペレーター7、目標に到達した。助言を求める、オーバー。"
数秒の沈黙がある。コントロールから返答が来る、水晶のごとくクリアに。“オペレーター7、1番ポーチから荷物を取れ、オーバー。”
私は私の左胸にあるポーチに手を伸ばす。私は手のひらいっぱいのプラスチックと金属の破片を取り出す。それは元々は私の親指ほどの大きさの円筒だったように見える。
"コントロール、荷物に問題がある。壊れている、オーバー。"
“くそっ。オーケー、代替手段を見つけるまでしばらく待—”
外の廊下からグレネードの炸裂する大きな爆音がする、叫び声がすぐに続く。私がトリップワイヤを仕掛けていたに違いない。叫びに混じる悪罵から判断するに、それは彼らを全員殺しはしなかったようだ。私はコントロールパネルの背後で射撃姿勢をとる。タクティカルギアを纏った1人の男と1人の女が開いた扉を通って駆け込み、あたりを見回す。彼らは私に気付き、私に彼らの武器を向け始める。彼らは遅すぎる。私は3点バーストを撃ち込み、男が倒れる。胸部へのクリーンヒット。女が発砲する。彼女は注意深く狙わなかった。銃弾は私が背後に隠れているコントロールパネルに当たり、私のそばを空を切って通り過ぎる。私は遮蔽物の後ろで蹲り、私の頭を低くしたままにする。彼女はフルオートで撃っているので、私は後座で彼女の銃が引き上げられるまで一瞬待つ。弾丸は天井を引き裂き始める。私は彼女に狙い直す暇を与えない。私は飛び出し、彼女の胸部中央にバーストを撃ち込む。彼女は倒れる。
私は戸口を狙って待つ。1、2、3、4、5。何もない。私はパネルの後ろをそっと離れ、ドアまで移動し、ベージュのカーペットが敷かれた通路を見渡した。死体が3つあり、そのうち1つはまだ弱弱しく動いている。彼の身体の下の血溜まりは長くないと告げている。私は今しがた私が撃った2人を調べ、二人とも息があると気付く。彼らのボディーアーマーが衝撃を受け止めたのだ。私は深く息を吸う。私は2人にとどめをさす。私はこうするのを好まないが、これはせねばならない。私は立ち上がり息をし、自分をリラックスさせる。
すべては静穏だ。状況確認。近辺に動きはないが、私の足元には死体が2つあり、私の武器は最近発砲されている、黄信号。私はコントロールパネルと点滅する光の列を表示した大型のディスプレイで埋め尽くされた、広々とした工業施設の部屋にいる。あちらこちらに弾痕があり、いくつかのスクリーンと表示は損傷を受けている。残りのスクリーンは動く色のパターンを表示している、まるで砕けた虹の破片が降り注いでいるように。それは私にめまいを起こす。私は床を見る。私は気分が良くなった。
私は私の左手を見る、それは空だ。コントロールが耳元で話す:
“オペレーター7、解決策が見つかりました。まだ目的物のところにいますか?オーバー。”
"少し待て、コントロール。"私は私の右手をチェックする。コントロールパネルの絵を表示した小さなスクリーンがある。あれだ。私はそちらへ動く。"コントロール、目的物の側にいる。何をすればいい?オーバー。"
“オーケー、オペレーター7、コムズアレイを取り出してもらいます。”
私は私の肩に手を伸ばし、ポーチからアレイを外す。私はもつれたワイヤーとプラスチックの箱の塊を取り、それを手に持つ。
"I持っている、コントロール、オーバー。"“オペレーター7、緑のUSBケーブルを見つけてバックアップモジュールから抜いてください、オーバー。”
"緑のケーブルが1本ある。どっちの端がバックアップモジュールか、コントロール?オーバー。"
“小さい方のユニットがバックアップモジュールです、オーバー。”
"ああ。緑のケーブルをバックアップモジュールから外した。これをどうする?オーバー。"
“コントロールパネルの後ろを見たら、緑のケーブルに合う接続口が1つあります、オーバー。"
私はコントロールパネルの後ろに屈む。私は機械に出入りしているケーブルの雑然とした山を見る。数えるにはあまりにも多い。
"コントロール、どこか分からない。もう少し助けが要る、オーバー。"
“いいでしょう、分かりました、オペレーター。そこにUSBハブが埋まっているはずです……大量のケーブルでコントロールパネルにつながっている、小さなプラスチックの長方形。そこで空のソケットを探してください、オーバー。"
私は見る。すべてが長方形だ。すべてがプラスチックだ。
"コントロール—"
私は何かが動く音を聞く。室内に速く重い足音。私はコントロールパネルの背後から飛び出す。私は死体のそばに跪く1人の戦闘員をみる。彼は彼らを調べている。私が彼を見るのと同時に彼は私を見る。私たちは双方銃に手を伸ばす。私の銃はケーブルの山に引っかかった、なんとか引き抜いたが彼はすでに狙いをつけている。私はどこに銃撃が当たるか理解する。私は逃げている。私は十分に早くない。彼の最初の1発は私の肩をかすめる。2発目は私の腹部に当たった。私はまるで金槌で殴られたように感じた。私の視界は灰色に……
すべては静穏だ。ああ……っ、痛い。状況。確認。私の眼は焦点が合わない。私は寒い、赤信号。私は、室内?私は床に横たわっている。床は濡れている。私は負傷し、出血している。私は寝がえりを打って仰向けになり、ベルトにある救急セットに手を伸ばす。私の右手には感覚がない。私は左手で不器用に取ろうとして……うっ。私はもう少しでまた気を失うところだった。私は片手でセットを開く。包帯と被覆材が床に転がり落ちる。1つの影が私の上に聳える。私はそれが友好的であることを期待する。
すべては……寒い……
[抜粋終わり]
オペレーター#7はこの時点で死亡したと思われます。この損失の結果として、作戦は失敗と見なされました。受け入れがたい数の負傷者を伴いましたが、正規部隊が送り込まれて襲撃者を掃討しました。
未だ正体不明の襲撃者は、当時電力グリッドコントロールステーション中のモニターに表示されていた認知災害性画像を施設のオフィスネットワークに挿入することに成功していました。この画像は数名の死者を出しながら、ほぼ全スタッフを意識不明に陥れました。その後襲撃者は抵抗されることなく施設に侵入し、6時間にわたって電力をシカゴの全G4グリッドから過疎地の単一のサブステーションに転換しました。これが資する目的は不明です。
監督委員会は、オペレーター#7および彼女の取扱者、エージェント・ゲイル・イプパとエージェント・キャメロン・キングのいずれも発生した事件の責を負わないという決定を下しました。彼らは皆模範的に振舞いました。
しかしながら; オペレーター#7の現代技術を扱う能力の欠如は、好ましくない結果の重大な寄与事実であると結論付けられました。この無能力は彼女自身の落ち度ではなく、彼女の機動部隊内での役割のために施された処置に本質的なものです。
当委員会は機動部隊パイ-20の最高レベルでの再評価を推奨します。今日の財団に今の形の機動部隊パイ-20の居場所があるか、また余剰のオペレーターの最善な処分法について考慮されるべきです。
機動部隊パイ-20司令官、ジャスティーン・ウルハタン(Urchadainn)牧師のオフィスからの覚え書き、2014年12月21日
この部隊の司令官を退くとあなたたちに伝えねばならないのはとても気が重い。
私にはただ、祈誓者たちの男女への敬意しかない。こんなにも献身的でプロフェッショナルな同僚たちと共に働き、また率いることができたことを誇りに思う。あなたたちと過ごした時間は、私に奉仕とは何か、犠牲とは何かを教えてくれた。このレッスンが私の将来のキャリアにプラスになることを期待する。
皆がオペレーターの将来について懸念を示していることは知っている。彼らにとっていよいよもってなじみのない世界を理解し、そこで働く能力の欠如が妨げとなったのだ。学べず変われず、旧式で時代遅れになり、作戦上の負債となったのだ。最近の事件の後で、最古参のオペレーターたちを引退させることが決定された。
現役を引退することになったオペレーターたちの名誉ある扱いを確かなものにするため、私は自分の財団における政治的影響力のすべてに訴えている。どうか安心してほしい。この男女は己の人生をこの組織にささげ、その上でさらにすべてを余すことなく与えたのだ。彼らは被験者でも、異常なオブジェクトでも、壊れた機械でもない。我々のうちでもっとも勇敢な者たちなのだ。財団の中で最良の手本とされるべき者たちであり、最大の敬意に基づく処遇以外を許すつもりはない。彼らは音楽と快適に座れる場所以外の何かを必要としないし、要求することもないが、どちらも手に入るだろうし、我々が提供できるあらゆる慰めを受け取れるはずだ。
オペレーターたちは己の献身を思い出すことはないだろうが、私たちは彼らを忘れない。