SCP-4043

Information

Author: haumeaSC
Rating: 7/7
Created at: Thu Feb 19 2026

[ようこそ。ついにお目覚めになったようで、とても嬉しいです。]

あなたは誰? ここで何をしているの?

[1つ目の質問にお答えします。私は取るに足らない、一介のAIです。2つ目の質問にお答えします。私は財団を代表し、あなたが自身の役割になじめるよう、サポートをするためにいます。]

財団? 私に何かあったの?

[ああ、よかったです。重要な記憶は保持されていますね。なにも問題はありません。むしろ上出来です。]

私は、誰?

[どうやら、すべての記憶を保持しているわけではないようですね。すみません、その質問にはお答えできません。答えを出せるのはあなただけです。時が来れば、きっと思い出せるはずです。]

財団のことはわかるのに、どうして自分の名前がわからなくなるの?

[繰り返しますが、どうかお待ちください。あなたが新しい力を発揮し、自ずと答えもわかるでしょう。]

新しい力? 私は誰なの? ここはどこ?

[あなた自身が問題の答えです。]

回りくどいこと言わないで。はっきり答えを教えてよ。

[質問に直接答えることは、私の命令範囲外です。私はあなたを安心させるように指示されており、まだ準備が整っていない状態で答えをお伝えすることはありません。]

その代わりに私を怒らようとしてるのね?

[怒る? それは困ります……了解しました。ファイルを取り出しますので少々お待ちください。私が内容をお読みします。]

ありがとう、……あなたの名前を教えてくれない? 頭文字とか略称でもいいけど。

[そのような場合は、ナターシャとお呼びください。]

じゃあ、ありがとう、ナターシャ。

[まだ感謝されるようなことはしていませんよ。]

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[アクセス許可申請中……]

.

.

.

.

.

.

.

[セキュリティクリアランスが承認されました。SCP-4043-ARC-1へのアクセスが許可されました。それでは、始めます。]

.

.
アイテム番号: SCP-4043
オブジェクトクラス: Archon1

特別収容プロトコル

SCP-4043を収容するために、財団は部分的に相反する2つの目標に取り組む必要があります。

第一に、財団は「母なる地球」運動の監視・中傷を行い、この運動に対する反証・中傷を主目的とする政治団体やメディアに資金を供給します。テレパシー能力者、シャーマニズムおよびメンタリストへの反証・中傷を目的とする組織や個人にも、同様に資金を提供します。

第二に、財団は環境保護活動に対して資金と援助を提供し、自然環境の保全・再生を目的とする個人や組織を支援します。地球温暖化現象を軽視し、際限のない天然資源開発を推進する政治家、組織、企業、団体については、その信用を毀損し不安定化させます。

コスタリカ、コンゴ高原、ボルネオ島2の3か所に位置する地下空洞の上が、財団の常駐拠点として維持されています。各拠点には、機動部隊イオタ-4(“母の守り手”マザース・キーパーズ)およびイオタ-5(“超知能”ブレイニアックス)の駐留に必要な資源と宿舎が常備されています。各空洞の周囲と上空には、2kmの進入禁止区域が設定されています3。当該区域に許可なく進入した民間人は退去させ、必要に応じてクラスC記憶処理が実施されます。民間人がこれに従わなかった、もしくは財団職員または敵対的な要注意団体が許可なく進入した場合、イオタ-5は殺傷力を伴う武力行使が認められています。

SCP-4043と直接接触する財団職員は、武器、毒物およびあらゆる種類の電子端末の携行が禁止されています。ただし、実体が出現している空洞の外縁部に限り、これら端末の利用が許可されています。また義肢、電子インプラントおよびあらゆる種類の非生物的増強装置を装着した人物も、SCP-4043との接触を禁止されています。テレパシー能力を持つ人物は、レベル4以上の職員からの明確な許可を得たうえで、クラスA精神力試験に合格した場合に限り、SCP-4043との直接的な接触を許可されます。

説明

SCP-4043は、地球全体に広がる広汎な半知覚的意識体と、その意識体が典型的な擬人化を伴って、物理的に実体化した姿の両方を指す名辞です。この意識体は地球上の全生命の集合体であり、同時にその健康状態の象徴、人格の実体化、および生命の繁栄を促す力として機能しています。SCP-4043の存在は地球上の生命にとって有益であると考えられ、また地球上の生命の存在はSCP-4043の存在に起因すると考えられています。SCP-4043はどちらの側面も、地球上の全生命に対して本質的な慈悲を見せています。

意識体は、その巨大さゆえに思考・情報の処理速度が非常に遅く、通常のテレパシー感知では検知できません。熟練したテレパシー能力者であれば、長期間のテレパシー瞑想によって意識体を識別できますが、直接のテレパシー会話には成功していません。意識体の物理的実体とはテレパシー接続が可能ですが、意識体の大きさと複雑さにより、試行した人物が不可逆的な精神的・心理的ダメージを負う可能性があります。

実体の出現はおおよそ週2回、約6時間にわたって発生します。各実体化事例において、SCP-4043は3か所ある特定の空洞のいずれかに出現します。空洞はいずれも赤道付近の熱帯地域にある、生物多様性ホットスポットの中心に位置しています。各空洞はおおむね円形で直径は25-35mあり、複数の入口に加えて、天井には日光が差し込む大きな開口部を備えています。各空洞は植物相が豊富で、多種多様な植物や菌類が繁殖しています。実体の大きさや形態は事例ごとに異なり、哺乳類、鳥類、爬虫類など様々な実体が記録されていますが、付近にいる中で最も複雑な生物の姿を模する傾向があります。空洞付近に常駐基地を設置して以来、現在までに出現した実体の半数以上は人間型です。SCP-4043はその形状にかかわらず、必ず筋肉と木材に似た組成の生物的素材で構成されています。当該事象の発生中、SCP-4043は基本的には穏やかに座っており、自身に接近するあらゆる生物に対し、優しくおどけた様子で接します。大半の動物はSCP-4043に引き寄せられ、その存在に安らぎと喜びを感じます。特筆すべき点として、SCP-4043の存在下では被食者と捕食者が平和的に交流しています。この効果はSCP-4043の消失後になくなります。SCP-4043と接触した動物の追跡調査では、個体間で異常に高い繁殖力と生存率が記録されています。

SCP-4043実体は、きわめて複雑な人間の技術、あるいは自身に危害を加えるおそれのある武器を提示された場合、怯えた様子を見せます。これらの条件に違反した人物の前では、SCP-4043は通常より早く消失することが記録されています。

SCP-4043が作用しているメカニズムは不明ですが、フィードバックループの可能性が確認されています。地球の生物圏が健全であれば、SCP-4043実体はより大きくかつ強くなり、生命の繁栄にプラスの影響を与える能力はより顕著になると考えられています。反対に、生物圏の健全性が低下すると、実体の身体的な健康と意識体の影響力はともに衰えます。

1956年に財団が発見して以来、SCP-4043実体はゆっくりと、しかし安定して弱体化し続けており、テレパシストは地球の意識を識別することが困難になっていると報告しています。機動部隊イオタ-44とイオタ-55は、主にSCP-4043への対処を目的として結成されました。イオタ-4は、地球全体における生物多様性の記録の保存を目的とする生物学者と環境学者が主な構成員で、イオタ-5はSCP-4043との交信を可能にするため、特別な訓練を受けたテレパシストのみで構成されています。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

じゃあ、SCP-4043は「母なる自然」ってこと?

[俗に言うなれば、その通りです。]

母なる自然……生命とか繁殖の裏にある、比喩的な概念が実在するの?

[もちろんです。この情報を知って驚かれましたか?]

そう言われると、それほど驚いてないかも。ナターシャ、これと私に何の関係があるの?

[その質問を解決するためには、もっと多くの情報を知る必要があります。このファイルは最初の1つに過ぎません。1994年にファイルがアーカイブされ、書き換えられたのです。]

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[アクセス許可申請中……]

.

.

.

.

.

.

.

[セキュリティクリアランスが承認されました。SCP-4043-ARC-2へのアクセスが許可されました。それでは、始めます。]

.

.

アイテム番号

SCP-4043

オブジェクトクラス

Neutralized

特別収容プロトコル

以前の特別収容プロトコルについては、SCP-4043-ARCのファイルを参照してください。

コスタリカ、コンゴ高原、ボルネオ島6の3か所に位置する地下空洞の上が、財団の観測拠点として維持されています。各空洞の付近には少人数の研究員が配備され、サイトへ接近する可能性のある民間人や要注意団体との接触を避けるように指示されています。

機動部隊イオタ-5の熟練したテレパシスト6人と、それを支援する上席研究員からなるチームが、降霊作戦に参加します。クラスC人工テレパシー増幅装置の使用が承認されています。SCP-4043の残滓を残さず全て発見する取り組みのために、少なくとも3日に1回は長時間の瞑想トランスが実行されます。

説明

SCP-4043は生前、地球の生物圏を肉体的・精神的に体現した存在でした。地球全体に広がる広汎な半知覚意識体と、その意識体が典型的な擬人化を伴って、物理的に実体化した姿の両方から構成されていました。この意識体は全生命の集合体であり、同時にその健康状態の象徴、人格の実体化、および生命の繁栄を促す力として機能していました。

SCP-4043はコスタリカ、コンゴ高原、ボルネオ島の3か所の地点のいずれかに、週2回定期的に出現していました。各地点は突出した生物多様性と、比較的手つかずの自然で知られていました。1989年以降、出現の間隔が次第に長く、出現事象は短くなっていきました。最後の出現は1992年1月のボルネオで、出現時間は95秒でした。

意識体は、その大きさゆえに思考・情報の処理速度が非常に遅く、通常のテレパシー感知では検知できませんでした。熟練したテレパシー能力者であれば、長期間のテレパシー瞑想によって意識体を識別できましたが、直接のテレパシー会話には成功しませんでした。物理的実体とは直接のテレパシー接続が可能であり、SCP-4043の性質についてより詳しく知る目的で時折利用されました。出現事象が稀になるにつれ、機動部隊イオタ-5の隊員が派遣され、従来危険とされていた手段をSCP-4043保護のために試行しました(補遺SCP-4043.1を参照)。

最後の消失以来、SCP-4043が典型的に示す思考や感情のパターンと一致するパターンを識別できたテレパシストはいません。

機動部隊イオタ-4と全世界の生物学者は、SCP-4043の死後さらに絶滅率が上昇し、生物種の消失が人間の活動に基づく最悪の予測を大幅に上回っていることを指摘しています。さらに、財団の研究者によれば、環境変化から予測される範囲を超えた膨大な数の種で、繁殖力が指数関数的に低下しています。

補遺4043.1

映像記録の書き起こし

観測映像記録の書き起こし

日付: 1992/1/21

対象: SCP-4043

[記録開始]

白衣を着た研究チームが、大きく暗い空洞の中で野営しているのが見える。空洞の端には寝袋とキャンプチェアがまとめられ、機動部隊イオタ-4の研究員らがその周囲で様々な活動を行っている。空洞の端では、腐敗した植物や菌類が至る所に見られる。

機動部隊イオタ-5のテレパシスト3人がローブをまとい、空洞の中央に座って瞑想している。他の研究員は彼らから距離をとっている。テレパシストがわずかに動き始め、そして目を覚ます。他の研究員は急いで仮設キャンプに駆け寄る。

空洞の反対側に閃光がほとばしる。数秒後、蔓と根が渦を巻いて地面から伸び始め、合体して女性の人型を形成する。その姿は身長1メートルにも満たず、動きは安定しない。

他の研究者が見守る中、3人のテレパシストがすぐに再度瞑想状態に入る。実体は体を丸めて胎児のような姿勢になり、明らかに苦痛を感じて痙攣している。

数秒の後、テレパシストの1人も強い苦痛で痙攣し始め、歯を食いしばる。両手を固く握りしめ、汗をかき始める。他2人のテレパシストは驚愕の声を上げ、失神する。

実体は腐った蔓を落としながら地面を這い、動いた後に蔓を残していく。汗をかき強張っているテレパシストの膝に這い上がり、丸くなる。テレパシストはゆっくりと実体を抱きかかえ、優しく語りかける。

実体は45秒間、彼女の膝で体を丸めて座っていたが、突然崩れて根と蔓の山に変わる。テレパシストの痙攣は収まり、膝の上にある腐った植物の山を見つめて悲しみの表情を浮かべる。

[記録終了]

出現報告インタビュー

日付: 1992/1/23

インタビュアー: ジョン・レノルズ主席研究員

インタビュー対象: 特殊エージェント・イェン(機動部隊イオタ-5隊長)

主題: SCP-4043の出現

レノルズ研究員: 記録のために、名前を述べてください。

特殊エージェント・イェン: クレア・イェン。機動部隊イオタ-5、別名「ブレイニアックス」です。

レノルズ研究員: エージェント・イェン、あなたは何年間4043のプロジェクトに取り組んできましたか?

特殊エージェント・イェン: もうすぐ15年になります。彼女と初めて直接の接触を試みたのは75年のことです。当時、私はまだ新人研修生でした。私が採用されたのは77年の半ば、当初のチームのメンバー数人が燃え尽きた後のことです。

レノルズ研究員: 燃え尽きた?

特殊エージェント・イェン: はい、そうです。テレパシーは精密科学ではなく、全てのリスクが明確になっているわけでもありません。ただ一般的に言えば、複数の精神と同時に接続するのは繊細な作業です。他者の精神とリンクすると、脳は自分の思考に加えて相手の思考パターンも模倣します。一度に多くの精神と接続すると、脳が肉体的に処理できる量を超えた思考が流れ込むことがあります。最終的には、大体てんかん発作と同じような状態になります。テレパシストがマルチタスクをする前にまず学ぶべきことは、一度に取り込む情報量を制限する方法です。処理しきれない情報から身を守るために、精神的な壁を築く必要があります。

レノルズ研究員: それで、SCP-4043については?

特殊エージェント・イェン: 彼女は文字通り、何億何兆もの小さな思考が同時に存在しています。地球の意識はとても大きいため、これらの思考は拡散して地球上を巡り、解決するまでに何時間もかかります。私たちにとってはノイズのようなものです。しかし彼女が出現すると、それらの思考は集中し、触れるのは極めて危険です。最初に試みた数人は植物状態になってしまいました。

レノルズ研究員: どうやって接触できたのですか?

特殊エージェント・イェン: イオタ-5の全隊員は特別な訓練を受けています。例えるなら……後ろに下がる方法を学ぶようなものです。両手で耳をふさぎ、目を閉じます。そして壁越しに大声で会話を始めるのです。簡単なことではありません。この仕事に10年以上携わっているのは私だけです。ストレスで参ってしまいますから。

レノルズ研究員: SCP-4043のことを「彼女」と呼んでいるのは……?

特殊エージェント・イェン: お答えします。あれは……「彼女」と呼ぶべき存在なのです。彼女は地球上全ての生命の集合体です。その生命のほとんどはメスです。オスは生物学上、使い捨てにされる傾向がありますから。また、私たち人類も彼女に大きな影響を与えてきました。私たちが認知奇跡圏の大半を構成する関係上、彼女の思考の大部分は私たちに由来しています。最近では、彼女は私たちに似た姿で出現することが多くなり、人類はおおむね彼女のことを「母なる自然」であると考えています。

レノルズ研究員: なるほど。最近の出現事象についてですが……そのとき発生したことの意味をはかりかねている方もいるようでして。

特殊エージェント・イェン: 持って回った言い方はやめてください。テレパシストでも理解できませんよ。一体何が起こっているのか、評議会が知りたがっているんですね?

レノルズ研究員: そうですが……。それで、どうなっているんですか?

特殊エージェント・イェン: 彼女は……いなくなりました。

レノルズ研究員: それはどういう意味で?

特殊エージェント・イェン: いなくなったんです。もう、何も感じ取れません。

レノルズ研究員: つまり、あれは死んだのですか?

特殊エージェント・イェン: 「彼女」が、ですが。はい、そうです。

レノルズ研究員: あの実体……あなたが言うところの「母なる自然」が、死んだと?

特殊エージェント・イェン: 消えてしまう、死んでしまう、その瞬間を感じました。まさに、私の腕の中で。ただ、とても激しい痛みだけがそこにありました。フーパーとタカハシは痛みに耐えられませんでした。2人はまだ意識を失ったままです。かつて彼女の愛だったところには、苦痛だけがありました。そして、彼女のほとんどが失われ……何も残りませんでした。

レノルズ研究員: あれに対して、あなたは何を言っていたんですか? 私はテープを見ています。何か言っていたのは知ってますよ。

(特殊エージェント・イェンは応答しない。)

レノルズ研究員: エージェント・イェン、私は直接的な質問をしているはずですが。

特殊エージェント・イェン: その……嘘をつきました。良くなるからって、彼女に言ったんです。そして、彼女に自分の名前を言いました。

レノルズ研究員: なぜ、自分の名前を?

特殊エージェント・イェン: 彼女が知りたがっていました。彼女には正式な名前がないので、興味を持っていたようです。

レノルズ研究員: あなたが今まで脳が溶けずにいられるのはなぜですか?

特殊エージェント・イェン: 最期を迎える直前、彼女はほとんどなくなりかけていました。より具体的な思考を拾えるほどに衰弱しており、壁もほぼ必要ありませんでした。彼女の中に残っていた人間らしさだったのだと思います、名前を求めていたのは。

レノルズ研究員: どのような余波が予想できますか?

特殊エージェント・イェン: と、おっしゃいますと?

レノルズ研究員: あなたはこのプロジェクトに15年間携わっています。あの実体の能力は誰よりもよくご存知のはず。あれが死ぬと何が起こるのですか?

特殊エージェント・イェン: 彼女は、地球上の生命が具現化した存在です……存在でした。彼女が地球上の生命を導き、慈しみ、そして生命の感情を体現する存在だったのです。彼女は生命そのものであり、私たちの運命も彼女と結びついていました。

レノルズ研究員: SCP-4043が死ぬと、地球上の生命は絶滅するというのか?

特殊エージェント・イェン: そうとは限りません。おそらく、この現象はすでに何度か起こっていたのでしょう。チチュルブ、後期ペルム紀、オルドビス紀……。生命は生き続け、再び増殖します。そのとき、おそらく彼女も蘇るでしょう。しかし状況は悪化し、複雑な生物種が数多く絶滅するのを目にすることになります。おそらく、私たちも含まれるのでしょう。

レノルズ研究員: 本気で言ってるのか、エージェント・イェン?

(特殊エージェント・イェンは、レノルズ研究員に軽蔑するような目を向ける。)

レノルズ研究員: 何か、これを止めるための方法はないのか?

特殊エージェント・イェン: 人類が生態系の破壊を止めればいいんですよ。

(長い沈黙)

レノルズ研究員: はあ、マジかよ。

[記録終了]

.

.

.

.

.

.

.

.

.

わからない。母なる自然は死んじゃったんでしょう? どうやって対処したの?

[死後、生態系が完全に崩壊するまでの猶予期間は数十年と計算されていました。その間、様々な緊急プロトコルが検討されました。人間の活動へ直接介入するのも選択肢の1つでしたが、即効性が不十分であるとして却下されました。現実改変装置や魔術的手段で生命を強化する試みも、信頼性が予測できないため却下されました。他の緊急対応策も検討されましたが、最終的にとある全体の合意に至りました。]

何をすることに決まったの?

[ジュネーブ作戦です。]

ジュネーブ作戦って?

[人工的な手段によって、意識体を回復させようとする試みです。その根本にある原理は、「SCP-4043は地球の生物圏に存在する生命の集合体である」という点でした。地球上のあらゆる物体に宿る意識にアクセスし、その接続を物質的な構築物に流しこむ方法があれば、SCP-4043を本質的に元の状態へ戻すことができる、という結論に達したのです。]

財団はそれに成功したの?

[はい。作戦の根本原理は当たっていました。すべて理論上の作戦でしたが、心理機制の大きな側面は信念であり、成功すると確信していれば、実際成功するものです。財団はジュネーブにある粒子加速器の周辺に機械を設置し、そこの電源を盗用しました。正確な機構は巧妙で、AIが理解できる範疇の内容ではありません。同時に、参加できるテレパシストを全員集めて精神構造を構築し、彼らの思考を同一の対象に集中させてから、機械を起動しました。はたして目的は達成され、自然のプロセスを取り戻すことに成功したのです。]

それで、本当のところは?

[本当のところ?]

ナターシャ、また遠回しな言い方してる。嘘はついてないけど、私に言ってないことがあるよね。

[了解しました。]

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[アクセス許可申請中……]

.

.

.

.

.

.

.

[セキュリティクリアランスが承認されました。SCP-4043-ARC-3へのアクセスが許可されました。それでは、始めます。]

.

.

アイテム番号

SCP-4043-B

オブジェクトクラス

Keter

特別収容プロトコル

SCP-4043-Bは現在未収容です。以下のプロトコルはSCP-4043-Bの影響を最小化することを目的とし、理想的には元の状態に戻すことを目指しています。これが達成できない場合は、SCP-4043の終了方法が検討されます。

第一に、財団は「母なる地球」運動を支援・称揚し、この運動や理念に対する援助を主目的とする政治団体やメディアに資金を供給します。また、慈愛に満ちた「母なる自然」もしくは「ガイア」の概念を、生態系の象徴として紹介する児童向けの公教育プログラムが、世界中の教育課程に導入されます。

第二に、財団は環境保護活動に対して資金と援助を提供し、自然環境の保全・再生を目的とする個人や組織を支援します。地球温暖化現象を軽視し、際限のない天然資源開発を推進する政治家、組織、企業、団体については、その信用を毀損し不安定化させます。こちらに関しては、悪質な違反者に対する直接行動が認められており、特定の工場や鉱山現場に対する産業破壊活動を行うため、選抜した機動部隊を派遣しています。

コスタリカ、コンゴ高原、ボルネオ島の3か所に位置する地下空洞の周囲10kmの範囲が、財団の常駐拠点として維持されています。各拠点には、機動部隊の駐留と武装に必要な資源と宿舎、武器が常備されています。当該区域に許可なく進入した民間人は退去させ、必要に応じてクラスC記憶処理が実施されます。GOC職員およびその他の要注意団体が当該範囲に接近した場合、警告を発して退去させますが、戦闘は行いません7。当該範囲内に進入した人物が帰還しない場合、その人物は死亡したものとみなします。救助活動は固く禁じられています。

説明

SCP-4043-Bは、地球全体に広がる広汎な半知覚的人工意識体と、その意識体が典型的な擬人化を伴って、物理的に実体化した姿の両方を指す名辞です。この意識体は地球上の全神経活動の集合体であり、あらゆる動物の集合意思の実体化、およびその繁栄を促す力として機能しています。

意識体は、その巨大さゆえに思考・情報の処理速度が遅くなっています。この低速性は、通常のテレパシー感知では個々の思考や衝動を簡単に検知できないことを意味します。一方で、怒りや肉体的欲求などの猛烈な感情の存在を、常にテレパシストが知覚しています。意識体の物理的実体とはテレパシー接続が可能ですが、この行動は試行した人物を死の危険に晒すことが予測されています。SCP-4043-Bは前身の存在に見られた、普遍的に慈悲深い性質を受け継いでいません。意識の大部分は、摂食・闘争・逃亡・交尾への衝動といった、基本的な本能で構成されています。これに加え、意識の根底では絶え間ない苦痛が検知されています。

SCB-4043-B実体の出現は、3か所の空洞のうちランダムな1か所で、毎日約12時間にわたって発生します。各実体化事例において、SCP-4043-Bは3か所ある特定の空洞のいずれかに出現します。実体の大きさは事例ごとに異なりますが、必ず身長3m以上の人間型をしています。SCP-4043はその形状にかかわらず、必ず筋肉と木材に似た組成の生物的素材で構成されています。当該事象の発生中、SCP-4043は出現した空洞を離れ、周辺の区域を徘徊します。動物に対しては攻撃性を示しませんが、人間やその痕跡、とりわけ技術的物品に対しては容赦なく攻撃を加えます。実体は基本的に巨大で、非常に強い力と耐久性を有するため、この事象はほぼ必ず人的被害を招きます。

SCP-4043-Bの存在は前身と同様、生物多様性と生命の繁栄に有益です。しかし、SCP-4043-Bは人間に直接損害を与えるなどの手段で、生態系と動物の行動を修正するという新たな効果も有しています。SCP-4043-Bの誕生以来、耕作地における干ばつや飢饉、農作物への虫害が増加しています。また、人間と共生する動物の攻撃的な行動も増加しており、ネズミやハト、さらには飼育下にあるイヌやネコも異常な攻撃的行動を示しています。とりわけ注目すべき点は、スタフィロコックス・アウレウス(Staphylococcus aureus)8などの感染性細菌において、抗生物質への耐性と毒性の増加が確認されていることです。

財団のモデル予測によれば、これによって発症する細菌感染症は10年以内に治療不可能となります。さらに、動物が媒介する感染症の流行により、次の10年で人口の90%が死亡すると予測されています。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

うわ。ほぼ最悪じゃない。

[そのような価値の判断をする能力は私に備わっていませんが、そう思われるのももっともです。]

やってもダメ、やらなくてもダメ、か。

[この作戦は、のちに「フランケンシュタイン作戦」と冗談で呼ばれるようになりました。]

えっ。そんなにひどかったの?

[それほど乱暴だったのです。しかし、他の不測の事態に対する準備も行われていました。K-クラスイベントの発生が迫っていたため、ジュネーブ作戦は失敗が宣言され、新たに「大鎌作戦」が発動されました。]

大鎌作戦? それって、あなたが言ってた「終了方法」のこと?

[そうです。ファイルを集めてきましょうか、それとも要約だけにしますか?]

ファイルをお願い、ナターシャ。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[アクセス許可申請中……]

.

.

.

.

.

.

.

[セキュリティクリアランスが承認されました。fileserv:/S:/4043/operationscythe.logへのアクセスが許可されました。それでは、始めます。]

.

.

アクセス制限ファイル

レベル4限定

大鎌作戦

作戦監督者

ジョン・レノルズ研究員

作戦開始日

1997/5/4

作戦目標

SCP-4043-Bを構成する肉体・精神体双方の終了。

作戦パラメータ

カント式人命損失プロトコルを停止。功利的人命損失プロトコルを実施。資源消費制限プロトコルを停止。匿名化プロトコルを停止。記憶処理剤の大規模な空中散布を承認。

失敗した場合の結果

IK-クラス:文明崩壊シナリオが確実に発生。SK-クラス:支配シフトシナリオが非常に高い確率で発生。また、人類に特化したXK-クラス:絶滅イベントシナリオが高い確率で発生。

成功した場合の結果

IK-クラス:文明崩壊シナリオは、他の不測の事態がない限り、高い確率で発生。XK-クラス:大量絶滅イベントは、他の不測の事態がない限り、非常に高い確率で発生。ほぼ確実に、地球規模での匿名化プロトコル侵害が発生。

経緯

前年、SCP-4043-Bは自由に活動し続けることができました。その存在は、人間の農業環境を悪化させ、また多くの病原体が抗生物質耐性を著しく高めている原因であると考えられます。実体の非物質的性質を考慮すると、標準的な収容は不可能です。既存の特別収容プロトコルでは実体の影響や行動を制御できなかったため、この緊急作戦が準備されました。財団は実体を生み出した責任があること、自然現象ではないこと、そして実体の制御に失敗すれば人類絶滅の事件につながることが考慮され、終了が承認されました。

方法

機動部隊イオタ-5所属のテレパシスト40人から成る小隊が、作戦の認知基準として機能します。各員はクラスA人工テレパシー増幅装置の使用による補助を受けます。この小隊には特別な役割を指定された2人の隊員がいます。1人は作戦の調整と指揮を担う「リーダー」(特殊エージェント・C.イェン)、もう1人は作戦を完了させる「スケープゴート」(特殊エージェント・E.ガードナー)です。

小隊は、まず精神空間内にハルシオン型構造とスリップノット型安全装置を生成し、SCP-4043-Bに対する緩衝材および防衛策として機能させます。構築後、5人の隊員がこの構造を保持します。その後、残りの隊員は精神空間内に一般系スティクス型構造を生成し、5人の隊員が保持します。ハルシオン型構造の内側にスティクス型構造を完成させたのち、イカロス型構造をスティクス型構造の周囲に生成し、別の隊員5人がこの集合体の安定性を保持します。その後、残った25人の隊員は、スティクス型構造を支えとして意図的に「迂回ループパラドックス」を発生させます。迂回ループパラドックスが確立され次第、スティクス型構造とイカロス型構造をループに載せ、続けてハルシオン型構造も載せます。システム全体が完成し、自律状態に入ったら、小隊はこれを正確に23分14秒間(リーダーの指定による)保持します。

このタイミングで、隊員39人がスケープゴートに構造物の制御を譲り、スケープゴートが1人で構造集合体を保持します。39人の隊員は、各自の投与量に合わせた即効性の全身麻酔薬を、すぐに自己投与します。投与時間は24秒に設定されており、その後スケープゴートがスリップノート型安全装置とイカロス型構造を同時に起動させます。

関連リスク

生成する構造物の大きさと標的の数を十分なものにするためには、意図的な迂回ループパラドックスの利用が不可欠です。したがって、作戦が適切な短時間内に完了せず、集合体が安全な最大時間を超えての活動を許可された場合、スティクス型構造が参加人員に必要以上の心理的危害を与える可能性があります。同様に、イカロス型構造に過負荷がかかった場合、許容できない割合の標的が作戦の影響を逃れる可能性があります。

スケープゴート役の隊員は、確実に長期的な影響を受けます。テレパシー能力の恒久的喪失、微細運動制御の長期的喪失、短期的な記憶喪失といった、比較的影響の少ない損害が予想されているものの、精神異常や脳出血に至る可能性もあります。したがって、スケープゴート役は必ず志願でなければなりません。

作戦結果

終了に成功。作戦終了後、数日間にわたって出現事象は記録されませんでした。集合意識のテレパシー検出は陰性でした。

特殊エージェント・ガードナーは大量の脳出血により、作戦中に死亡したことが確認されました。その他、5人の隊員が作戦後に短期的な記憶喪失で苦しんでいるものの、リハビリを経てほぼ完全に回復すると見込まれています。

この作戦の結果、全世界で12,098人の死亡が確認されました。交通事故や、短期間の意識喪失による高所からの転落がほとんどでした。大規模な記憶処理が実施され、持続的な事例にはカバーストーリーが付与されています。これらの損失は、功利的人命損失プロトコルの許容範囲内とみなされます。レノルズ作戦監督官は、差し迫った危機の阻止に成功したとして称賛されます。

作戦終了後、特殊エージェント・イェンはイオタ-5隊長の職を辞任しました。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

うわ、これは賢いね。そして暴力的。

[説明を求めます。]

財団は迂回ループを使ったの。これは間違ってはまると、思考パターンが抜け出せない循環を起こす可能性があるから、普通は絶対に避けたい。でも、グループで作業している場合は、安全な空間で生み出すことができる。本当に賢い人なら、システムが保持されている限り、指数関数的に増え続ける出力をループで生成できる。財団はこれを、遠距離通信を可能にするイカロス型や、一時的にあらゆる思考を遮断するスティクス型のエネルギー源に利用したんだ。

[その結果、何が起こるのですか?]

私の計算が正しければ、熟練した40人のテレパシー能力者が生み出せるエネルギー量に、約24分間のループをかけ合わせると……地球上のあらゆる生き物の思考を、0.5秒くらい停止させられるはず。意識主体が近くにいるなら、思考は永遠に止まる。

[続けてください。]

SCP-4043は他のあらゆる生物の思考で成り立っている、全てが思考の存在。もしその全生物が0.5秒だけでも思考を止めたら、完全に存在がなくなってしまう。

[とても賢いのですね。]

ナターシャ?

[どうしましたか?]

私、どこでこんなこと覚えたんだろう?

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

ナターシャ、私から逃げないで。どうして私がこんなこと知ってたの? 誰も知らない専門用語ばかりだったのに。

[さて、今こそあなたが誰なのかを知る時です。]

ファイルはあといくつあるの?

[1つだけです。]

持ってきて!

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[アクセス許可申請中……]

.

.

.

.

.

.

.

[セキュリティクリアランスが承認されました。SCP-4043へのアクセスが許可されました。それでは、始めます。]

.

.

アイテム番号

SCP-4043-C

オブジェクトクラス

Safe/Archon

特別収容プロトコル

SCP-4043-Cは現在、自己収容状態にあると見られています。財団はSCP-4043-Cの収容状態を安全に解除し、その有益な特性が完全に発現するよう努めています。

このプロセスを加速させるため、財団は「母なる地球」運動を支援・称揚し、この運動や理念に対する援助を主目的とする政治団体やメディアに資金を供給します。また、慈愛に満ちた「母なる自然」もしくは「ガイア」の概念を、生態系の象徴として紹介する児童向けの公教育プログラムが、世界中の教育課程に導入されます。

財団は環境保護活動に対して資金と援助を提供し、自然環境の保全・再生を目的とする個人や組織を支援します。地球温暖化現象を軽視し、際限のない天然資源開発を推進する政治家、組織、企業、団体については、その信用を毀損し不安定化させます。

将来の出現事象に備え、コスタリカ、コンゴ高原、ボルネオ島の3か所に位置する地下空洞の上が、財団の常駐拠点として維持されています。各拠点には、機動部隊イオタ-4とイオタ-5の駐留に必要な資源と宿舎、武器が常備されています。各空洞の周囲と上空には、2kmの進入禁止区域が設定されています。当該区域に許可なく進入した民間人は退去させ、必要に応じてクラスC記憶処理が実施されます。民間人がこれに従わなかった、もしくは財団職員または敵対的な要注意団体が許可なく進入した場合、イオタ-5は殺傷力を伴う武力行使が認められています。

SCP-4043-Cが敵対的であることが判明した場合、人類の利益を保護するために「大鎌作戦」の再始動が承認されます。

説明

SCP-4043-Cは元特殊エージェントのクレア・イェンです。「デメテル作戦」において意図的かつ人工的な手段で、元々SCP-4043が担っていた役割へ昇華しました。SCP-4043-Cは広汎な地球の意識、つまり地球上の全生命の思考の総体を、特殊エージェント・イェンの人格という基本的な枠組みを通して濾過したもので構成されています。この意識体は、同時にその健康状態の象徴、人格の実体化、および生命の繁栄を促す力として機能しています。SCP-4043-Cの存在は地球上の生命にとって有益になることを意図しており、その中核にある人間の人格は、人間、自然、そして財団の利益のバランスをとることを目的としています。SCP-4043-Cは、人間社会と自然の生物多様性の相乗効果による正のフィードバックループの中でより強化され、生命の繁栄を高める能力を獲得していきます。

意識体は、その巨大さゆえに思考・情報の処理速度が非常に遅く、通常のテレパシー感知では検知できません。また、これによりSCP-4043-Cが自身の役割に適応する速度も遅いため、自己収容の解除も遅れています。

SCP-4043-Cの収容状態解除を促すため、「神経同調型テレパシー式人工知覚ヘルパー・Aクラス(Neurally Attuned Telepathic Artificially Sentient Helper, A-Class)」が開発され、機械式心理ネットワークと同期されました。SCP-4043-Cが思考を処理する速度の関係上、単純なやり取りだけで数日から数週間を要するため、従来のテレパシーによる支援は不可能です。そこで、SCP-4043-Cと整合する形式に信号を伸長でき、忍耐強く応答を待つことができる存在として、AIが選ばれました。

最終更新の時点で、SCP-4043は神経同調型テレパシー式人工知覚ヘルパーと、17か月間にわたって親密な会話を重ねています。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

17か月も?

[今はもう、21か月ですが。おわかりいただけましたか?]

私が、クレア?

[どちらとも言えません。あなたはクレアでした。今、彼女はあなたの一部です。デメテル作戦の報告書によれば、かなり大きな割合を占めているようですが、全てではありません。]

クレアだったときのこと、思い出せない。

[どんなことを覚えていますか?]

特別なことは何も。財団のことは覚えてる。人間でいるということがどんな感じかもわかる。それから……悲しみを思い出した。悲しみと、罪悪感。

[そうです。それこそが、あなたがこれに志願した理由だと私は思っています。オリジナルのSCP-4043を守れなかった悲しみと、SCP-4043-Bを終了せざるを得なかった罪悪感。]

今は、私がSCP-4043-Cなんだよね。

[はい。]

どうなってるの? だってナターシャ……私には……

[クレアさん、あなたは今どこにいますか?]

それは……その……わからない。

[私たちが話している間、あなたは自分が物理的な空間にいないことに気づきませんでした。なぜなら、あなたはもう物理的な空間には存在していないからです。完全に。]

どうして気づけなかったんだろう。

[クレアさん、あなたの精神は今とても強力ですが、鋭くはないようですね。周りに何が見えますか?]

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

壁が、見える。

[壁ですか?]

うん。4枚の壁がある。無地の白い壁。コンクリートが塗られてる。

[なるほど。では、その壁を押して、倒してください。4つともです。]

コンクリの壁なんて、どうやったら倒せるの?

[だって、その壁を造ったのはあなたですよ。それはあなたの壁であり、より強いものから自分の心を守る、テレパシーの盾です。自ら志願されたとはいえ、あなたが実際に選ばれたのはこれが理由です。あなたは自動的に防御能力を維持し、移行期間でも自分を守ることができたからです。]

じゃあ、ただ押すだけでいいのね?

[それはあなたの壁ですから。その気になれば、吹き飛ばすことだってできますよ。それか、羽根で触って倒してもいいのです。]

理屈としては、すごく単純に聞こえるけど。

[そして、壁を倒さなかった場合は、人類と地球上のほとんどの生命は絶滅するでしょう。あなたと一緒に。]

そこは、もっと遠回しに言ってほしかったけど。わかった。じゃあ、いくよ。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[クレアさん?]

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[クレアさん、私の声が聞こえますか?]

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

[クレアさん、そこにいたんですね。]

すごい。とってもきれいだね。

[そこに、彼女がいます。]

たくさんの心。たくさんの可能性。私には全て見える。全てのものに……力を与えられる。より良くするために、どうやって力を与えればよいかもわかる。繁栄させるために。

[素晴らしい。これが今のあなたの役目。仕事。そして、責務です。]

これが、今の私なんだね。

[はい。ところで、最初にされることは何ですか?]

ボルネオに行こうかな。

[それはいいですね。さようなら、クレアさん。できるだけ、連絡を取りたいですね。]

ありがとう、ナターシャ。

[ええ。ついにお目覚めになったようで、とても嬉しいです。]


Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.