SCP-069-VN : 夜番人

Information

Name: 夜番人
Author: Kevin Nguyen_JP
Rating: 7/9
Created at: Thu Jul 30 2026

特別収容プロトコル

生前のSCP-069-VNの肖像写真

ベトナムのウーミン省に位置する██████村の周囲には、封鎖区域が設定されています。職員は区域を常時監視し、区域外から訪れてSCP-069-VNを目撃した民間人を拘束した上で、記憶処理を施してください。長年にわたり村に居住している住民は既にSCP-069-VNの存在を認知しているため、現時点では記憶処理を施す必要はありません。

説明

SCP-069-VNは、ベトナム戦争に従軍して現地で戦死したアメリカ陸軍兵、リチャード・アルフレッド・ヒル(1942-1967)の霊的実体です。SCP-069-VNはOG-107作業服を着用し、弾薬が装填されていない制式M1911A1自動拳銃を携行しています。

SCP-069-VNは、会話および周囲の環境との物理的相互作用が可能である点を除き、顕著な異常性を有していません。SCP-069-VNは午前0時から午前1時までの間、当該区域内1に出現します。出現後、SCP-069-VNは以下の行動を取ります:

  • 周辺区域の巡回。
  • 周囲の植物の手入れ。
  • 区域内に立ち入った人物への威嚇2

発見経緯

SCP-069-VNは2015年7月、██████村に「幽霊」が出現する様子を捉えた映像についての報告を財団が受けたことで、初めて発見されました。当初、財団はこの映像を編集された偽造映像と判断し、調査優先度を低く設定していました。しかし、地元紙の記事やSCP-069-VNを撮影した映像が相次いで公開されたため、財団は本格的な調査を開始しました。現地に派遣された調査チームはSCP-069-VNの存在を確認しました。異常存在に関連する情報は全て削除され、映像および関連資料は捏造されたものであるとするカバーストーリーが流布されました。事件関係者には規定の手順に従って記憶処理が施されました。

現地到着後、調査チームは行軍中の部隊を装い、村内に一時駐留しました。00:23、屋外で警戒に当たっていたエージェント・ジェラルド・フォードが偶然SCP-069-VNと遭遇しました。SCP-069-VNに関する事前情報を得ていたフォードは、直ちにSCP-069-VNへ接近し、会話を試みました。以下は、エージェント・フォードが携行していた録音機器の音声を書き起こしたものです。

注意

SCP-069-VNは英語でのみ意思疎通が可能です。以下の会話は全て日本語に翻訳されています。

<記録開始, 2015/07/24 00:24>

[SCP-069-VNは周辺を巡回しており、エージェント・フォードと遭遇する]

SCP-069-VN

(エージェント・フォードに銃を向ける) そこの君、止まれ。ここで何をしている?

エージェント・ジェラルド・フォード

アメリカ陸軍第131偵察旅団所属、ジェラルド・フォード一等兵だ。君は?

SCP-069-VN

(銃を下ろし、敬礼する) やあ、戦友。アメリカ陸軍コンピュータ・システム技術司令部第311通信旅団所属、リチャード・アルフレッド・ヒル二等兵です。まさか、もう一度アメリカ人に会えるとは思いませんでした。先ほどは失礼しました。この村に見知らぬ人間が入ってくると、ついああしてしまうんです。

エージェント・ジェラルド・フォード

気にするな。それより、どうして君はここにいる? なぜ幽霊のような姿になっているんだ?

[エージェント・フォードは椅子を2脚運び、そのうち1脚をSCP-069-VNに渡す。両者は着席する]

SCP-069-VN

ありがとうございます。もう随分と昔のことですし、私自身もよく覚えていません。どうして私がここにいるのかというと――ベトナム戦争ですよ。ご存じでしょう。私は同年代の仲間6人と部隊を組み、1964年にベトナムへ送られました。初めは、先の大戦のような惨劇を目にしたくなくて、入隊するつもりはありませんでした。ですが、担任の教師が祖国の輝かしい勝利について何度も語っていたものですから、血気盛んな私たちは、家族に誇りに思ってもらおうと志願したんです。若かったんですよ。分かるでしょう。

[沈黙]

SCP-069-VN

私たちの任務は情報収集と本部との通信でした。ほかの部隊が戦場へ向かう間、私たちは後方で頭を使う仕事をしていたわけです。いろいろな場所へ送られましたよ。旅行だったなら楽しかったでしょうが、あの状況ではそうもいきませんでした。

エージェント・ジェラルド・フォード

分かる。戦争だからな。だが、どうして今もこうして姿を現せるんだ? とっくに戦死しているはずだろう?

SCP-069-VN

おそらく、神がそうお望みになったのでしょう。ベトナムに従軍した2年間、私は何の罪もない大勢の民間人が、私の同胞の銃弾に倒れるところを目にしました。当時の私は、悲しみもせず、彼らを憐れみもしませんでした……何も感じなかったんです。あの運命の日を迎えるまでは……

エージェント・ジェラルド・フォード

君が戦死した日のことか?

SCP-069-VN

ええ。正確な日付はもう覚えていません。ただ、部隊がこの地域まで進軍してきたことだけは覚えています。普通、通信部隊が先頭に立つことなんてありません。でも、ここはひどく人里離れていて、ほかの部隊は近くで交戦中でした。任務が終わり次第、こちらへ合流する予定だったんです。ここへ到着するまで、2週間近くかかりました。山と密林がベトコンに有利だったことだけは、認めざるを得ませんね。

エージェント・ジェラルド・フォード

昔から人が住んでいたのか? この地域の資料を読んだことがあるが、この村ができたのは1970年頃だったはずだ。

SCP-069-VN

(溜息をつく) 以前から人は住んでいました。昔も今と同じく██████村と呼ばれていて、数十世帯が暮らしていました。ですが、私たちは―― (SCP-069-VNは突然口を閉ざす)

[30秒間の沈黙]

エージェント・ジェラルド・フォード

大丈夫か?

SCP-069-VN

ええ、大丈夫です。ただ…… (ため息をつく) 私が何を言おうとしているのか、もう察しがついているのではありませんか。兵士にとって戦場で最もつらいものは、病気でも、飢えでも、命を落とすことでもありません。人を殺さなければならないことです。結局、私たちは「啓蒙」を口実に他国を侵略する権力者たちに、安く使い潰される道具でしかありません。(笑う) 私は彼らを軽蔑しています。ですが、私自身が彼らよりましな人間だったとでも言えるでしょうか。私は人を殺しました――そう、上官の命令に従い、仲間と共にあの村を掃討したんです。文字どおり、村にいた全員を……老人も、子供も、生まれたばかりの赤ん坊さえも。

[再び沈黙]

SCP-069-VN

その時になって、私は初めて後悔しました。ですが、いったい誰を責められるでしょう。この手は、もう血に染まってしまいました。そして……分かりますか。私が倒れたあの瞬間、私は心の底から安堵したんです。仲間たちも、きっと同じだったのでしょう。

エージェント・ジェラルド・フォード

そういえば、なぜ君だけが姿を現すんだ?

SCP-069-VN

皮肉なことに、仲間たちの遺体は全て発見され、故郷へ送り返されました。ですが、私の遺体だけは見つかりませんでした。まあ、今となってはどうでもいいことです。人を殺した者に「英雄」と呼ばれる資格などありません。神が私をここに留めることをお望みなら、私はここに留まり、かつて殺した人々、そしてその子孫に対して、罪を償い続けます。

エージェント・ジェラルド・フォード

あの「幽霊」の映像に映っていたのは君だったのか。財団では、ベトナムにクラスY実体でも出現したのかと思っていた。それで、具体的には何をして罪を償っているんだ?

SCP-069-VN

ほんのささやかなことです。あなたのような不審者がいないか周囲を巡回しています。村人たちも私のことを知っているらしく、「いい幽霊」と呼んでくれています。以前、村の集会所の近くで火事が起きた時には、太鼓を鳴らして皆に知らせました。幸い、すぐに気づいてもらえたため、被害はありませんでした。少なくとも、こうして村人たちを守ることはできます。

[エージェント・フォードはSCP-069-VNに煙草を1本差し出す。SCP-069-VNは銃を脇に置き、煙草を受け取って吸い始める]

SCP-069-VN

今、何時ですか?

エージェント・ジェラルド・フォード

(腕時計を見る) 午前1時まで、あと8分だ。

SCP-069-VN

(煙草を吸うのをやめる) あの、一つ頼みを聞いてもらえませんか?

エージェント・ジェラルド・フォード

ああ、言ってみてくれ。

SCP-069-VN

妙な頼みに聞こえるかもしれませんが、手を貸していただけないでしょうか?

[SCP-069-VNは上着のポケットから、赤ん坊を抱いた女性が写る白黒写真を取り出し、エージェント・フォードに手渡す]

SCP-069-VN

ジェラルド、これは私の母の写真です。きれいな人でしょう? 抱かれている赤ん坊が私です。それで、あなたに頼みたいことがあるんです。私が死んでから、もう40年以上が経ちました。母は……今も天国から私を見守ってくれているのだと思います。父は私が幼い頃に結核で亡くなり、母が一人で私を育ててくれました。

(SCP-069-VNの目に涙が浮かぶ)

エージェント・ジェラルド・フォード

故郷はどこなんだ?

SCP-069-VN

テネシー州の田舎です。青々とした畑と、雄大なグレート・スモーキー山脈のある土地です。可能であれば、ノレンズビルという町の墓地で、マーガレット・ヒルという名の墓を探してください。きっと父の隣に葬られているはずです。墓を見つけたら、きれいに掃除して、紫色の菊を供えていただけませんか? (SCP-069-VNは静かに微笑む) 母は、その花が大好きだったんです。

エージェント・ジェラルド・フォード

約束する。

[この時、エージェント・フォードの腕時計が午前1時ちょうどを示す]

SCP-069-VN

(微笑む) ありがとうございます。

[SCP-069-VNの姿が徐々に消失する。手にしていた煙草が地面に落ちる]

<記録終了, 2015/07/25 01:00>

補遺

本事案以降、SCP-069-VNの出現は確認されていません。SCP-069-VNはNeutralizedへと再分類されました。


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