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Name: 強引なセールスマン
Author: AMADAI
Rating: 6/6
Created at: Sun Jun 25 2017
アイテム番号: SCP-1840-J
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル
SCP-1840-Jはいまだ収容されていません。SCP-1840-Jから財団にかけられた電話は、全てDr.シーワードに転送してください。許可を受けていない職員がSCP-1840-Jと会話し、SCP-1840-Jないしその関係者から提供される物品や生物などについて売買、賃貸、譲渡などの契約を結ぶことは、いかなる場合においても固く禁止されています。SCP-1840-Jから入手した物品その他を現在所持している財団職員は、ただちにその事実を申し出てください。財団がSCP-1840-Jの危険性を認識するより以前に入手したものであることが証明されれば、責任を問われることはありません。
説明
SCP-1840-Jは、電話による勧誘販売を行うセールスマンです。SCP-1840-Jは定期的に財団職員に電話をかけ、自らが所有している物品について(しばしば誇張が含まれている内容の)簡単な説明を行ったのち、価格と取引の方法を提示します。取引方法は多くの場合、購入された物品の隠し場所をSCP-1840-Jが購入者に伝え、購入者が物品を回収後に同じ場所に代金を置いてくるというものです。現在のところ、SCP-1840-Jが購入者との合意に従わなかった事例は確認されていません。SCP-1840-Jの声は、陽気で図々しさを感じさせる若い男性のものです。
SCP-1840-Jが提供する物品は、単に金銭的または趣味的価値しか持たないもの(恐竜の化石やダイアモンドの指輪など)であることもありますが、多くはSCPに分類され得る特異性を持っています。その危険度は一定ではなく、Safeクラス相当のものから、Euclidクラスの中でも非常に危険な部類に入るものまで様々です。Dr.シーワードには、高度の危険性または緊急に収容する必要性を有する物品は全て購入するように指示が出されています。物品の金銭的価値の高さに比して、SCP-1840-Jが提示する価格は極めて安価であり、Euclidクラス相当の物品が5000ポンド未満で販売された例も存在します。また、SCP-1840-Jは価格交渉には積極的に応じる姿勢を見せており、過去には最初に提示された価格の30%を下回るほどまで割引をしたケースも確認されています。時には、SCP-1840-Jの強い関心を引いた購入者に対して無料で物品が提供されることもあるようです。
[████/08/12 12:41 通話開始]
Dr.リヒター: 失礼、電話がかかってきました。もしもし?
SCP-1840-J: はじめまして! リヒターさんでいらっしゃいますか? 実はわたくし、リヒターさんのような方にぴったりの商品のご案内をさせていただきたいと思いまして。本物の恐竜の骨の化石にご興味はおありですか? レプリカなんかじゃありませんよ! しかも新品同様!
Dr.リヒター: えっ? どちら様ですか? と言うか、恐竜の骨が「新品同様」って?
SCP-1840-J: 頸骨の化石なんですがね、これが6500万年も前のものでして。でも、恐竜の体の中にあったのはほんのちょっとの間だけなんですよ。なので実質新品というわけです!
Dr.リヒター: だから、どちら様ですか? どこで私の番号を?
SCP-1840-J: わかりました、この際正直にお話ししましょう。実は前の所有者というのがちょっと不注意な方でしてね、小惑星が落ちてきて吹っ飛ばされてお亡くなりになっちゃったんです。でも、焦げた跡がうまい具合にデザインの一部になってるんですよ。わたくし、フェアなお取り引き以外はしないというポリシーがございますからね。この化石を手に入れるためなら、代わりに自分の頸骨を売ってもいいって考古学者の方々もいるんですよ。これ、ティラノサウルスの骨なんです。密林の王者! いや、沼地とかかもしれませんがね。
Dr.リヒター: いや……。
SCP-1840-J: それでお値段は1000ポンドちょうど! これは出血大サービスですよ、わたくし本日はとても太っ腹な気分ですので! どうかお願いしますよ、わたくし最近いいことがないんです。うちの犬は離婚届にサインしろって言ってくるわ、女房は獣医に入院するわで、って違った。まあいいや、こうなったら800ポンドでいきましょう! これは事件ですよ!
Dr.リヒター: いたずら電話か? デイリー研究員、今すぐこの電話の発信元の調査を! 失礼ですがお名前は? 私はこの施設の上級研究員です。こういうくだらない……。
SCP-1840-J: 待って、待ってください! じゃあ500、500にしましょう。これが限界です。本物のティラノサウルスの骨の化石ですよ! こんなチャンス一生に一度しかありません。史上最強の肉食恐竜の化石なんて、いくらお金を積んだって手に入るようなものじゃないんですから、本当は。ええい、こうなったら400だ! ラストチャンス!
Dr.リヒター: こっちは何も買うつもりはない。こんな幼稚ないたずらをして、誰だかわかったらただじゃ済まないぞ! 失礼!
[通話終了]
[████/08/14 16:12 通話開始]
デイヴィス研究員: はい?
SCP-1840-J: はじめまして! あなたのようなお若くて美しい女性にぴったりのお品物のご案内です! ちょっと考えてみてくださいね。1000ポンド、たった1000ポンドで美の女神からの贈り物が手に入るんですよ! 超がつく希少品! このあたりじゃまず手に入りません!
デイヴィス研究員: はあ、それってアレでしょ、自分に自信をつけるアイテムとかそういうのじゃないの? 鏡に「あなたはもう十分に美しい」って書いてあるとか、そんな感じの。だって……。
SCP-1840-J: いやあ、これはナノテクノロジーを利用した遺伝子再構成装置なんですが、ご所望とあらばそういった鏡も一緒にご用意できますよ! 励ましのメッセージの内容も、ご希望に応じて調整いたします。財団の方には「私たちは自分が何をしているのか理解できている。何も心配ない」なんてどうでしょう? 「主任研究員になったら寝る時間もない? だったら寝なければいいじゃない」とか。わたくし、こういうのを考えるのは得意なんです。今すぐご契約いただけますよ。メッセージ100種類がセットになって50ポンドではいかがでしょう? あと、ナノボットがお顔を食べ尽くしちゃったりすることはないからご安心くださいね。ああ、いや失言。今のは忘れてください。
デイヴィス研究員: ちょっと、誰だか知らないけど全然面白くないから。悪いけど私は……。
SCP-1840-J: おっしゃる通り。本当は自分たちのしていることなんて理解できてないんですよね? それに、睡眠不足でハイになったってそんなに楽しいものでもないと。わかりました、鏡はなしにしましょう。でも、遺伝子再構成装置のほうはお忘れなく。実はわたくしのガールフレンドが試してみたんですがね、まるっきり誰だかわからなくなっちゃいましたよ。いや、いい意味で。目はぱっちり、髪はゴージャス、スタイルは抜群。男なんかよりどりみどりになりましたよ。だからわたくし振られたんでしょうね。真面目な話、これをお断りになった日には未来永劫後悔することになりますよ。さあ、お返事をいただけますか?
デイヴィス研究員: [からかうように]ああそう。じゃあ無料サンプルでも送ってくれる?
SCP-1840-J: 申し訳ありません、それはできないんですよ。ナノボットの機能を停止させておくために、全部マグネティックストレージコアに封じ込めてあるもので……ほら、ナノボットってかなり危険なブツですからね。どんな生物の遺伝子だってお構いなしに再構成しちゃうんですよ。うちの犬なんかヤスデと融合させられちゃいましてね。悪夢のような姿になりましたよ。でも動きは速くなったし、壁を這えるようにもなったし、悪いことばかりでもありませんでしたね。とにかく、サンプルなし一発勝負! お買い上げいただくかどうかです。お値段は700ポンドにしちゃいましょう。信用していただけますよね? 何しろ財団で働いていらっしゃるんですから。この世界は、狂気という名前のパンツを頭にすっぽりかぶっているようなところです。遺伝子を書き換えるナノボットなんてかわいいものでしょう。さあ、600ポンドで永遠の美があなたのものに! いかがです?
デイヴィス研究員: [からかうように]はいはい、じゃあ後で取りに行くから、夜中のうちに公園にでも置いといて。ついでにフクロウみたいにホーホー鳴いてれば?
SCP-1840-J: そうこなくっちゃ! 話のわかる女性に違いないと、わたくし最初から信じていましたよ。何とお礼を申し上げていいやら。ただ、ちょっとハーレクインが鬱陶しく目を光らせてますのでね、隠密作戦といきましょう。秘密の隠し場所ってやつです。2ブロック先の公園にある緑の橋の下に、収容コアを隠しておきます。なるべく早く回収してくださいね、ナノボットはすぐ活性化しちゃいますから。わたくしの電話もあいつらに分解されちゃいましてね、うちのお隣さんの飼ってるイタチと融合させられたんですよ、これが。そんなバカなって話ですがね、でも全然問題なく使えてます。
デイヴィス研究員: ちょっと、何だか本気にしてるみたいだけど。私が本当にその公園に行って、収容コアとやらを橋の下から拾ってくるとでも思ってるわけ? 蝿女の恐怖なんてことになるのは御免こうむりたいんだけど。
SCP-1840-J: 人間の体組織は識別できるようになってますから大丈夫。何の問題もありません。全然心配なし! ただ、収容コアは本当に大事ですよ。ナノボットどもは残忍なやつらですから。近くにいるものは何でもかんでも融合させちゃうんです。白鳥とかリスとか子どもとか。考えるだけでも恐ろしい。ともかく、お買い上げありがとうございました!
[通話終了]
デイヴィス研究員は当該物品 (現在はSCP-████に指定) を自身のために使用せず、即時収容したことで賞賛されました。しかし数体のナノボットが逃走し、数体のSCP-███の発生につながりました。
SCP-1840-Jは、自身が非常に裕福な人間であり、大量の特殊な物品のコレクションを所有していると主張するほか、アンバウンド・ハーレクイン(「解き放たれた道化師」の意)なる存在から追われており、その追跡を逃れるためにコレクションを売却したがっていることを示唆する発言をしばしば行います。
SCP-1840-Jと財団職員の間にどのような接触があったかについては、当時財団の研究員であったDr.リヒターが尋問を行っています。その後もSCP-1840-Jから財団にかけられた電話の通話記録は全て保存されていますが、インシデント1840-A以降、SCP-1840-Jが電話をかけてくる頻度は大きく低下しました。
尋問対象: SCP-1840
尋問担当者: Dr.リヒター
日時: ████/09/20 13:08SCP-1840-J: こんにちは、ドクター! 今日はまたずいぶんとお顔を赤くして怒っていらっしゃって、お元気そうで何よりです! 本日ご用意したものは、きっとお気に入りいただけると思いますよ。
Dr.リヒター: うるさい、いい加減にしろよ。いつまでふざけた電話をかけてくるつもりだ! もう茶番は終わりだ。どこで我々の組織やこの施設のことを知った? どうやって私のことを調べた? 正直に話したほうがいいぞ。我々の力をなめるなよ。お前の正体は絶対に突き止めてやるからな!
SCP-1840-J: それは頼もしい限りです。ところで、ちょっと質問させてください。奥様はいらっしゃいますか?
Dr.リヒター: もう死んだよ。
SCP-1840-J: なるほど。ということは、最近はまた女性を求めて飢えた獣のように徘徊していらっしゃるとか? こりゃ大変だ、世の若い女性が危ない! みんな逃げてー! と、冗談はここまでにして。本日はドクターの魅力を極限まで高める商品をご用意しました。絶対にお気に召しますよ。昆虫はどうやって愛の告白をすると思いますか? そう、フェロモンです! 空気中にフェロモンが漂うやいなや、もう誰も彼も自分を抑えられなくなってしまうわけですよ! 生命の神秘! ところが、人間はこのフェロモンってやつに頼れない。でも大丈夫! 世の中には、人間に効くロマンスフェロモンを発明しちゃった人がいるんです。しかも超強力。オーデコロンなんか目じゃない。今日はこれ、もう投げ売りしちゃいます。だってドクターは……えーっと、どう言えばさりげなくお伝えできるかな……? 太ってらっしゃるでしょう。すごく。とっても。ですから必要ですよ、これ。在庫全部、まとめて放出しましょう。1リットルくらいあります。これでパーティーにでも行けば、あっという間に100人の美女に囲まれますよ。そしてですね、ここだけの話ですよ? お値段たったの6000ポンドなんです。
Dr.リヒター: これが最後だ。もう同じことは言わないぞ。お前からは一切、何も買わない。二度とセールスなんかしてくるな! それと今からする質問に答えろ! まず、これまでにお前から品物を買った財団関係者はいるか? いるとしたら、人数は何人だ? 全員の名前と、何を売ったのかも教えろ!
SCP-1840-J: えーっと……4人くらいの方にお売りしましたね。うん、4人です。最初はチャーミングな若い女性に、ナノテク遺伝子再構成装置をご購入いただきました。大変いいお取り引きをさせていただきましたよ。わたくしはあれを手放すことができましたし、そちら様も何とか一大事になる前に全部捕らえることができたんでしょう? 遺伝子融合した化け物どもを。さすがです。しかし、ナノボットの保管には気をつけないと危ないってことは、あの女性にちゃんとご忠告したんですがねえ。でもまあ、白鳥人間どものおかげでハーレクインの注意をしばらくそらすことができて、わたくしも助かりましたから、結果的には問題なしってところです。
Dr.リヒター: ……まさか、SCP-████のことを言ってるのか? あれを全員射殺しなければならなかったんだぞ、我々は! みんな死なせてしまったんだ! あれはお前の仕業だったということか!? 答えろ!
SCP-1840-J: ええ、あの人たちにはお気の毒でした。それで、フェロモンはお買い上げにはならないんでしたっけ? 残念です。では、こちらはどうでしょう。不思議な不思議なタブロイド紙です。セレブの方たちがあんなことやこんなことをしている写真がたくさん載ってます。ただし実際にしたことじゃなく、あなたが「あの人があんなことをしたらいいな」と思っていることをしている写真ですがね。同性愛、悪魔崇拝、暴力沙汰。実に興味深い写真になりますよ。みんなの弱みを一気に手中に! その写真を本物のタブロイド紙に送りつけてごらんなさい、大もうけできちゃいます。もちろんセレブのみなさんは否定するでしょうし、事実ではあり得ない根拠だのを並べ立てるでしょうがね、そんなに否定するんならやっぱり事実なんだろうと思われるだけですよ。世の成功者の顔に泥を塗ってやりたい、とか思いませんか? 思わない? ちっとも? 認めちゃいましょうよ。思ってるんですよ、あなたは。お値段、1000ポンドちょうどです。これはもう絶対譲れませんよ! なーんてね、やっぱり500でどうだ!
Dr.リヒター: [数秒の沈黙]わかった。特異物品をひとつ販売し、SCP-████が生まれたのはそれが原因で、相手の女性は誰だか不明と。いいだろう。……今回はこれで終わりにしようか。
尋問対象: SCP-1840-J
尋問担当者: Dr.リヒター
日時: 5:02 23/09/███SCP-1840-J: ハロー、Dr.リヒター! インシデントレポート修正の鬼! 100万キロカロリーの男! またお話ができて本当に嬉しいですよ。ところで突然ですけど、ご自分がまわりからどんな風に見られてるか知ってますか? 銀河にあまねく星が輝いていることにも文句をつけるような人に見えてますよ。いや、これちゃんと後の話につながりますからね。
Dr.リヒター: おはよう、SCP-1840。3日前の続きを始めよう。それともう一度言っておくが、私はお前からも、お前と関係がある他の誰かからも、何も買わない。物だろうが生物だろうが何だろうが、何もだ。レンタルだのリースだのも一切契約しない。絶対に私に何かを売りつけようとするな。今回はこちらの仕事の話だけさせてもらいたい。わかったか?
SCP-1840-J: そのご質問には、別の質問でお答えしましょう。あなたはいつもイライラしていますよね? もう見ているほうがうんざりするくらいに。まあ、最後まで聞いてください。同僚には笑いものにされる、上司にはいびられる。心の中ではこう思ってるんでしょう。「もういやだ! どうしてみんな俺にもっと敬意を払わないんだ! もっと俺を尊敬しろ! リスペクトしろ!」って。いいものがありますよ。地球外で作られた、超強力な破壊兵器です。これがあれば、同僚のみなさんももう大きな顔はできません。もう[禁止用語削除済]なくらい最高ですよ。もちろん本物です。本当に本当に本物ですよ。太陽系だって吹き飛ばせちゃいます。超新星を集束ワームホールに通して、鉛筆くらいの細さのビームにして発射するんです。ビームの速度は光速の98%。人に当たれば、ピー! はい死んだ! ついでにそのまわり3光年にあるものはみんな消し飛んじゃいます! おや、何か気になりますか? 「倫理」とかおっしゃっちゃいますか? それとも「モラル」? 「正義」? わたくしだったらこう言いますね。「我が方に恒星破壊級指向性エネルギー兵器あり! ただちに退去せよ、倫理ども!」。さあ、10万ポンドからスタートだ! 持ってけ泥棒! と言うか実際盗品なんですがね、これ。パターンスクリーマーに嗅ぎつけられたらちょっと危ない。余剰次元で悲惨な死に方をする羽目になる可能性がなきにしもあらず。
Dr.リヒター: いい加減お前の無駄話にも慣れてきた。だけどな、そういう話はDr.シーワードにしてくれ。さあ、お前が2番目に売った代物の話をしようじゃないか。誰に何を売ったのか説明しろ。
SCP-1840-J: おっと、そうですか? よろしいでしょう。えーっと、2番目は……研究員の方でしたね。トムさん。ティムさんだっけ? どっちだか忘れましたが。娘さんに新しいペットを飼わせてあげたいとのことでした。何か変わったペットがいいとおっしゃるので、それで……話せば長くなるんですが、ヤスデと融合した犬というのがわたくしの手元にいましたのでね。娘さんには大変気に入っていただけました。ご両親のほうもね、ご近所の方にあんまり大評判だったので大喜びですよ。どれくらい評判だったかって、ご近所みんな引っ越して二度と戻ってこなかったくらいです。我ながらいいことをしたと思いますね。あれは2000ポンドでお売りしました。しかし考えてみれば、わたくしあれを死ぬほど気味が悪いからって撃ち殺そうとしたこともあったんですよねえ。不明を恥じるばかりです。ヤスデ犬はあれしかいないんですが、でも電話と融合したイタチならありますよ。よろしければどうです? かわいいし実用性も抜群。電話しようとすると耳をかじられるのが難点ですが、メールを打ってやると喜んでグルグル言います。10ポンドでいいですよ。もっと気色悪いのをご所望という場合は、ナノボットがないことにはちょっと無理なんですが。
Dr.リヒター: 売ったものはSCP1体、危険性は最小レベル。現在の所有者は、財団の研究員2名とその子女1名。男性の研究者の名前はトム、またはティム。いいだろう。[溜息をつく]次は3番目の件だ。あれで我々はお前の存在を認識するに至った。売った相手は24歳の男性、SCP-████の研究に携わっていた財団の下級研究員だ。詳しいことはお前の口から説明してくれ。
[以下のログは、インシデントレポート████████に記載されているログと同一のものです。]
SCP-1840-J: ああ、あれもいいお取り引きでした。あのときはわたくしオフだったんです。自宅で飲み物片手にくつろいでいましてね。その前の日にハーレクインから逃げてたもので、もうくたくただったんですよ。ストリップクラブに8時間も隠れていなきゃいけませんでした。疲れますよ、あれは。ともかく自宅にいたんですがね、おたくの研究員の、えー……。
Dr.リヒター: T.ウェールズ。
SCP-1840-J: そう、テリーさんからお電話をいただきまして。誰かからわたくしの電話番号を聞いたそうです。昇進の役に立つものがほしいとのことでした。「もう3年、来る日も来る日もSCP-████の研究ばかりだ」とおっしゃっていましたよ。「昇進と配置替えの希望を叶えられるものがほしい。金は用意した」とね。それでわたくし、コレクションをひっくり返しまして。見つけたのが何だったと思います? 能力向上ドラッグです。成分不明、製造者不明。プラスチックの箱に注射器が6本入ってるやつです。「バッチ番号1679」と、あと「進化刺激剤・実験目的以外の使用を禁ず」とか箱に書いてありました。まあ実はですね、プラハのあたりで何とか撒いたアンバウンド・ハーレクインが、またぞろわたくしの居所を嗅ぎつけてきていたもので。しつこいですよね彼女。ですので、こちらとしても身の安全のために手段は選んでいられなかったんですよ。しかも、お客様のほうから売ってくれとおっしゃる。お金もあると。で、お売りしました。100ポンドで。
Dr.リヒター: それからどうなったか知っているか?
SCP-1840-J: すぐに注射したんでしょう? 悲鳴が聞こえてきたとき、わたくし公園から1ブロックくらいしか離れていませんでしたからね。ぞっとしましたよ。振り向いたら公園は血の海、あたりの車はスクラップ。生き残ってた人は助けてくれーって叫んでる。怖かったですね、本当。生きた心地がしませんでしたよ。ハーレクインの注意を引いちゃったら大変だ、ってね。どんな気持ちかわかりますか?
Dr.リヒター: お前のドラッグを注射したT.ウェールズは、一瞬で数百万年分の進化を遂げて凶暴な肉食獣のような姿になり、それから体を破裂させて死んだ。あの事件で13人の人命が失われたということも知っているな?
SCP-1840-J: もうそのことは思い出させないでくださいよ。本当に恐ろしいんですから。うちのアパートって、公園が見える位置にあるんですよ。まだ工事中なのが見えるんですよ。見るたびに思い出しちゃうんです。ハーレクインがいつ来るかわからないってことをね。
Dr.リヒター: わかった。……続きは明日にしよう。
[以下のログは、インシデントレポート1840-Aに記載されているログと同一のものです。]
尋問対象: SCP-1840-J
尋問担当者: Dr.リヒター.
TIME/DATE: 9:07 24/09/███SCP-1840-J: Dr.リヒターですね? 間違いない! もし違ってたら仰天しますよ! 行動の人、Dr.リヒター! 謎に包まれた男、Dr.リヒター! できることなら、その栄光に彩られた輝かしい日々のお話を、わたくしめにぜひお聞かせいただきたいものです!
Dr.リヒター: おはよう。ところで気のせいかな、何だかお前が物を売りつけようとしてくる予感がするんだが。
SCP-1840-J: さすが、勘が鋭くていらっしゃる! まずはちょっと、心の中で思い浮かべていただきたいことがあるんです。想像してください。砂漠です。どこまでも続く、広大な砂漠。果てしない砂の山。生きるものの気配すらない。ところが見回すと、砂丘を登る小さな黒い点がひとつ。ラクダの子どもです。迷子になったんでしょう。あてもなく、ただやみくもによろよろと歩いています。目に吹きつける熱い砂。助けを求める哀れな鳴き声。ぐらりとよろめいた。何とか踏ん張って、またふらつきながら歩き出す。
ふと見上げると、青い空に円を描く小さな黒い点がひとつ。またひとつ。またひとつ。ハゲワシです。餌を狙っているんです。円が降りてくる。低く……低く……。やがてついに、ラクダは砂の中に倒れ込む。胸が苦しそうに動く。ぼんやりと開いたままの目が、だんだんかすんで……疲れ果てた体の上に、最初のハゲワシが舞い降りる。そして残忍なくちばしが……
と、そのとき。哀れなラクダが弱々しく鳴いて……目の前のハゲワシの頭を食いちぎった! 荒れ狂うラクダ! 撒き散らされる死! 愚かな屍肉漁りどもは、血みどろの肉と散乱する羽根に早変わり! 実は、こいつは単なる子ラクダなんかじゃなかったんです。アクストリア・モックキャメルというやつでしてね、弱ったラクダの子どもの振りをしてハゲワシをおびき寄せるという性質があるんですよ。Dr.リヒター: そうか。で、なぜ私がそれを買うと?
SCP-1840-J: 買っていただきたいわけじゃありません。引き取っていただきたいんですよ。わたくしの手には負えないものでして。もう数え切れないくらい殺そうとしたんですがね、不細工な四つんばい野郎のくせに蛇みたいに動くんです。どうです、お考えになってみては。ラクダと称して売りつけるなんてことも、まあ普通ならできるんですが、さすがにこう危険となりますとね。
Dr.リヒター: 前から言っているが、そういう話はDr.シーワードに頼む。さあ、最後に売ったものについて聞かせてくれないか。
SCP-1840-J: いいですとも。最後のはちょうど一週間前でしたね。今までで一番いいお取り引きをさせていただきました。まあ最初のを除けばですが、でも同じくらいよかったですね。一度に四つもお買い上げいただいたんですよ。先方からお電話をいただきましてね、これがまた泣ける話なんです。Dクラスの女性の方が、担当の研究者の方と恋に落ちまして。感動ですよ。真実の愛の物語です。こんなことが実際にあるんですねえ。個人的には、自分を血に飢えたシーサーペントのところに送り込もうとするような相手に心を許すなんて……まあ、わたくしのことはいいですね。ともかく彼女は、愛する彼と一緒にここから逃げ出したいと思っていたんです。計画は全部できていました。でも他に必要なものがあったんですね。武器。爆薬。逃走用の乗り物。騒ぎを起こす手段。そう、そこでわたくしの出番ですよ。全部わたくしがご用意したんです。
Dr.リヒター: Dクラスが財団の施設から脱走を企んだということか? お前、それは……おい、彼女に一体何を売った? 彼女は今どこにいる?
SCP-1840-J: いやあ、感激しましたね。わたくしもね、そんな方からお金をいただくほど野暮じゃありません。人の恋路を邪魔するなんて、ねえ。なので、一番おっかないのをお譲りしましたよ。本当、手放せて助かりました。まずは「武器がほしい」とおっしゃいましたので、わたくし「旧ソ連製のサイクリック・チャージ・プロジェクターがあります」とお答えしました。次に「爆発物」。物質崩壊ガントレット! 「逃走手段」。ウェインライト・テレポートアレイ! 騒ぎを起こすのは……。
エージェント・ネス: あれ、ドクター? このラクダは収容とかしなくてもいいんですか?
Dr.リヒター: ま……ま、まさか……。
SCP-1840-J: せっかくの機会だったもので。雌のは特に危険なんです。繁殖開始間近だったやつですよ。大声を上げないように。でないと興奮させちゃいますからね。
エージェント・ネス: 何だおい、こんなに大量の……うわあああああ! ぐあああああーーーーーっ! 腕が! こいつ、俺の腕を! ああああああ、あああ……。
[爆発音と銃声が聞こえ、しばらくして静かになる。ドアが開く]
D-27893: さあ、一緒に来て! 何もかも一緒に乗り越えるの! 私たちならできるから!
Dr.リヒター: いや……それは……いや、わかった! 今いくぞ! 今いくぞ、ソフィー!
[D-27893が外に向かって発砲する]
D-27893: エリック、これを使って! ねえ、もし失敗したら私、あなたのそばで笑って死ぬからね! あなたと離れて生きるくらいなら!
Dr.リヒター: ガントレットか! 物質崩壊ガントレット! おい、ピザ野郎とか言ってくれたな、アラン? 見せてやる! ピザ野郎が何をするか見せてやる!
[警報音。建物が倒壊する音。叫び声]
D-27893: 見て、あいつらみんな逃げていく! エリック、柱を撃って! 機動部隊のやつらを閉じ込めるの!
Dr.リヒター: ファイルの整理をやり直せとか言ってくれたな! お前のファイルなんてめちゃくちゃじゃないか! こんな風に!
[警報音。建物が倒壊する音]
Dr.リヒター: 何ヶ月も! ファイルの整理をやり直してた! 今は違う! 新しい人生だ! 最高に危ない女がいて、最高に危ない武器がある人生だ!
D-27893: テレポーターの準備ができた! つかまって!
[キス。テレポーター作動。静寂が戻る]
SCP-1840-J: もしもし? いらっしゃいますか? [しばらくの沈黙]よろしければ、自動追尾式トマホークなんかいかがでしょう。ネイティブアメリカンのやつですよ。もちろん本物。投げると勝手に的に飛んでいってくれるんです。パーティーの余興に最適! 人の頭の上に乗ってるリンゴを落としたりとかできます。最高の結婚祝いだと思いましてね、いや、本当に! お代はこの際わたくしが持ちます。神業の斧投げで、新しい人生の伴侶にアピールしちゃってください! えー、ドクター? ドクター? [しばらくの沈黙]ああ、くそ!
[通話終了]