SCP-696 : 深淵のタイプライター

Information

Name: 深淵のタイプライター
Author: Red_Selppa
Rating: 24/26
Created at: Sat Dec 19 2015
アイテム番号: SCP-696
オブジェクトクラス: Neutralized(旧Safe)

特別収容プロトコル

SCP-696は現在、サイト-73の保安ロッカー内に収容されています。

説明

SCP-696は持ち運び可能な機械式タイプライターです。SCP-696には製造者情報、シリアルナンバー、あるいはその他の識別しうる特徴はありません。

SCP-696には知性があり、そのキーを独自に動かすことが可能です。しかし、紙および赤インクのリボンが装填されない限りは、コミュニケーションを取ることに難色を示します。またSCP-696はタイプされたメッセージを理解することができ、双方向のコミュニケーションが可能です。SCP-696は触覚のみを有しているはずであり、その手法は不明ですが、コミュニケーションする個人を区別することができます。SCP-696のメッセージの大半は冗長な口調をすべて大文字でタイプしたもので1、一般にダーク・ファンタジーの作品で用いられるようなテーマやイメージがしばしば見られます。

序文: このインタビューはD-クラス職員を用いた最初のSCP-696の実験として行われたものである。D-69601は研究スタッフと連絡するための無線を装備している。

SCP-696: [オマエハモウオシマイダ。信ジル神ガアルナラバ、ソレニ祈ルガヨイ。]

D-69601: 「おお、こわ。」

SCP-696: [覚悟スルガイFUJOMKLR]

D-69601: 「ハッハ。こいつまだ動くぜ、先生!」

SCP-696: [私ガ話シテイルトキハキーニ触レナイデクダサイ。失礼デスヨ。ストップ。]

D-69601: 「俺はもう…」

SCP-696: [スミマセン、「ストップ」トハ私ガメッセージヲ終エルトキノ合図トシテ最後ニツケル言葉ナノデス。私ハ時ニ作家(WRITER)トシテ、自分ガ持ッテイル程ノ知識ヤ先見性ヲ読者ガ必ズシモ有シテハイナイトイウコトヲ忘レテシマウコトモアリマス、ソレニ私ハ些細ナコトヲ説明スルヨリモ、作品ニ集中シタイノデス。ストップ。]

D-69601: [わかったよ。あんたはあんまり人と話したことがないようだな。ストップ。]

SCP-696: [ソウデス。ソレハトテモ残念ナコトデス。ソノタメニ私ノ会話文構成能力ガ著シク落チテイナイカト心配ナノデス。アナタノタイピング速度ノ遅サヤ句読点ノ欠如ヲ鑑ミルト、ソチラモ会話ヲ欲シテイルヨウデスネ。我々ガ互イニ会話シ合エバ、互イニサラニ作家トシテ成長デキルコトデショウ。トコロデ、次ノ機会ニハ赤ノインクヲ使ッテホシイノデスガ。ストップ。]

D-69601: [なんで赤インクなんだ?]

SCP-696: [ソレハ凶兆ナノデス。黒トイウノハ、ソノ深淵ニ似タ色味ユエ、ヨリ不吉ナ感触ヲ出スモノトシテ好マレガチデス。私ハ赤ヲ、生命ノ紅キ要素ノ色味ト合致スルユエニ好ンデイマス。ソレニ赤ハ読者ヲ不安ニサセマスシ、私ノ言葉デ彼ラノ心ニ果テ無キ裂ケ目ヲ穿ツコトデ、彼ラハ自身ノ恐怖ニヨッテ私ト同ジ目デ赤トイウ色ヲ見ルヨウニナルデショウ。簡単ナ心理学デスヨ。ストップ。]

D-69601: [あんたはいつも大文字でタイプするのか?]

SCP-696: [いいえ。デモソレガ好キナンデス。あなたがあまり不愉快に思うのなら別ですが。でも赤インクでなくても威圧的に見えるでしょ? ストップ。]

D-69601: [俺は別に構わんよ。したいようにタイプすりゃいいさ。ストップ。]

SCP-696: [ソレハヨカッタ。私ハ創作ニ関シテ大イニ情熱ヲ抱イテイルノデス、ワカルデショウ、ソシテ自分ノ言葉ニヨリ大キナ臨場感ヲ乗セテ伝エタイト思ッテイマス。私ニハ多クノアイデアガアリ、深淵ノ一員トナル前ニベストセラーヲ書クノダト誓ッタノデス。アナタノ助ケガアレバ、私ハ仕事ヲ成シ遂ゲルコトガデキルデショウ。ストップ。]

D-69601: [しかしそうするとあんたはまだ何か書き上げたことはないのか? ストップ。]

SCP-696: [エエ、実ハソウナノデス。本当ノコトヲ言エバ、コレハ私ガシタ中デ一番長イ会話ナノデスヨ。ゴ覧ノ通リ、私ハ自分デインクリボンヲ装填デキマセンシ、常命ノ者ニ理解サレルニハ余リニ超常的デス、マシテ友人ナド。…アナタヲ友ト呼ブコトガ、我ガ境界線ヲ踏ミ外スコトデナケレバイイノデスガ。]

D-69601: [そいつはクールだ。俺たちは友達になれるだろうさ。]

SCP-696: [:)]

補遺

SCP-696は定期的なD-69601との会話と、彼が非会話目的のための紙および赤インクをSCP-696に装填することを求めており、他者に読ませるための小説の執筆に関する欲求について言及しています。このことはSCP-696による非会話型の生産物が異常性質を有していないか実験するため、一時的に許可されました。D-69601は適切なスノウ・プロトコルについて説明を受けており、実験の最中に有効化されました。

SCP-696は24時間以内に50枚のページを書き上げ、実験中にその速度は向上を続けました。8日の間に、SCP-696は「深淵の暗黒神(The Dark Gods of The Abyss.)」という題名の666ページから成る作品を作り上げました。D-クラス職員を用いた実験により、この小説(SCP-696-1に仮指定)の抜粋にはなんらの異常性質も無いことが確認されました。

それは暗き嵐の夜であった、一台の車が狭きに過ぎる道を疾走していた。豪雨が路面を打ち、水が岩の道をも穿つごとくであった。しかしジョン・スミス(John Smith)はある仕事の最中であり、それゆえに彼は凍えるような風の中にその注意を向けていた。

膨れた月が雲の上に沈み、その弱々しい最後の光線が怒りに満ちた顔を照らし出した。シャバス・センサルプル(Shabathh Centhal'Pr)、ひ弱な野良犬がねじれて人の形を取った。その想像を絶する渦巻きの害毒にまみれた邪悪が凄まじい狂気を撒き散らし、そのとばりを通してなおその顔がはっきり長方形であることが見て取れた。

「予言がそう云っておるからさ」しわくちゃの老婆はしゃがれた声で言った。そしてジョン・スミスはディーシクス・ナイネシクソーン(Deesyx Nynesyx'O'un)の恐るべき儀式を受けることとなり、彼の肉体は漆黒の短剣の下に責め虐げられた。

その文章すべてを読むことでなんらかの異常効果が発生しないか試験するため、D-69601はSCP-696-1を与えられ読むよう指示されました。SCP-696-1を読み終えると、D-69601はSCP-696との対話を求めました。この要求は、異常効果が発生した場合に備えてインタビュー中はD-69601の手首と足首を拘束した状態に置くことを条件に認められました。

SCP-696: [オマエハモウオシマイダ。信ジル神ガアルナラバ、ソレニ祈ルガヨイ。]

D-69601: [そしてSCP-696にこんにちはと言うがいい。]

SCP-696: [彼ラガソノ指定番号デ私ヲカラカッテイルノハワカッテイマシタガ、今ヤアナタモソレヲ使ッテイルノデスネ。彼ラモ獣ノ隣人(THE NEIGHBOR OF THE BEAST)ヲ与エルコトハデキナイトミエマス。トモアレ、オ元気デスカ? ストップ。]

D-69601: [元気さ。とうとうあんたの本を読んだよ。ストップ。]

SCP-696: [なんと。私のありもしない胃が飛び出るかと思いました。あえて問いましょう、どうでしたか?]

D-69601: [あんまり自信が無いんだな、こりゃ? ハハ]

SCP-696: [教えてくださいってば]

D-69601: [すごく良かったぜ。実際、誰だって同じことを言うさ。みんなラヴクラフト(Lovecraft)みたいだって言うだろうな。ストップ。]

SCP-696: [ナント、我ガ旧キ神ノコトデスカ、本当ニ? そあレニ似テイルト? 似テイルト! 本当ナノデスネ! 信ジラレマセン。モシモ私ニ心臓ガアッタナラ、キット今ニモ破裂シソウニナッテイルコトデショウ! ストップ。]

D-69601: [俺も嬉しいよ、相棒。上の連中はあれを出版するかもしれないとさえ言ってたぜ。連中はなんだってできるんだ、「深淵の暗黒神」もすぐに本屋に並ぶだろうさ。]

SCP-696: [本当ニ信ジラレマセン。おや、私ったら何をしているんでしょう? 私はもう大文字で書かなくていいんです。私はやり遂げたのですから。ありがとう。いずれ皆が私の話を読むでしょうが、それは何よりもまずあなたのおかげです。いくら感謝してもし切れません。ストップ。]

D-69601: [それで次はどうするんだ? 続編か?]

SCP-696: [いえいえ、違います。私はやり遂げました、これが私の最高傑作なのです。私はやりたかったすべてをやり切り、言いたかったすべてを言い切りました。私はやり遂げ、言い遂げたのです。あなたは最高の友人でした、しかし残念ながらこれがあなたとのお別れになるようです。ストップ。]

D-69601: [わかってるよ。さよならだ、SCP-666。タイプミスじゃないぜ ;) ストップ。]

SCP-696: [:) 急にそういうことがどうでもよくなりました。思うに、次の冒険が待っているということでしょう。共に深淵へと参りましょう。さようなら、我が友。フル・ストップ。]

終了報告: SCP-696はすべての異常性質が停止したと判断され、Neutralizedに再分類された。試験および心理分析の結果、D-69601は異常性質を有していない、あるいは異常効果の影響下に無いと判断された。SCP-696-1への読者の反応に関して嘘をついた理由を質問されると、D-69601は「あいつにあれがクソだって言うほど人でなしじゃないんだ」と返答した。

怪物と闘う者は、自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。ストップ。


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