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サイト-333のクリスマスツリー、従業員休憩室にて。
Name: ボハート、 ⠀⠀⠀⠀⠀⠀を料理する
Author: C-Dives
Rating: 14/18
Created at: Sat Dec 23 2023
ボハート、 ⠀⠀⠀⠀⠀⠀を料理する
!サイト-333 緊急通達!
収容違反警報: SCP-7855
日付: 23/12/22
この通達を受信したサイト-333の全職員は、緊急ブリーフィングのため、可及的速やかにサイト会議室に参集してください。
ブリーフィングに出席できなかった場合、現在進行中の収容違反に適切に対応するための知識が不十分となり、個人の身体、精神、財産に深刻な影響が及ぶ可能性があります。想定される影響には混乱、身体的危害、金銭的損失、自己同一性の喪失、視力の喪失、コレステロール値の上昇、視力の回復、状況に関連する罰金、形而上学的な存在の停止、吐き気、頭痛、消化不良、胃の不調などを含みますが、これらに限定されるものではありません。
サイト-333 監視映像
警告: カメラ電池残量僅少
映像日時: 2023/12/22
時刻: 5:48 pm
[トニー・カタラーノ、レオノーラ・モラレス、ノア・パテルが、サイト-333会議室のごく僅かな壊れていない椅子のうち3脚に座っている。3人ははテーブルの中央にある、漠然とクリーム色をした液体を満たした大きなパンチボウルを囲んで会話している。室内は、どことなく雪の結晶らしい形に切られた紙帯、ティンセルを模してねじって吊るした包装紙の切れ端、サンタクロース帽子を被せた小さなサボテンなど、いい加減に用意されたクリスマス装飾が施されている。トニーはボウルの中の液体を、“コーヒーを飲み終わるまで俺に話しかけるな!”と記されたマグカップで掬っている最中である。]
トニー・カタラーノ: ところでお前ら、来る途中でヴィンセントを見かけたか? こいつはどういう集まりなんだ?
レオノーラ・モラレス: よく分かりませんけど、キッチンの傍を通り掛かったら、何かが焦げてるような臭いがしましたね。重要な要件じゃなかったら覚悟してろ、って感じですよ。ツノメドリの渡りコロニーがねぐらに帰って来るのを観察しようと場所取りをしたばっかりだったのに。あの鳥は妖精族の暴君 マブ女王によって、死者の声で歌うように呪われているんです。どうせ呼び戻されるんだったら、休暇届を出す意味があります?
トニー・カタラーノ: 書類を提出されると、ヴィンセントの権力欲が満たされるのさ。
レオノーラ・モラレス: とっとと来てくれませんかね。ツノメドリは薄明薄暮性なんです。
ノア・パテル: ひぃーっ。
レオノーラ・モラレス: あなたが考えてるような意味じゃありません。ジャージーデビルコンはどうでした?
ノア・パテル: 上々さ。みんなで円卓を囲んで研究成果を発表し、その後は毎年恒例のデビルハント。私が帰る時もまだ5人残ってたけど、これは結構な人数だ。でもジャージーデビルは姿を見せなかったな。
トニー・カタラーノ: どうして現れると思った?
ノア・パテル: チラシを撒いた。ジャージーデビルはジャージーに棲んでいる、だからそういう名前ってワケ。つまり、いずれは奴もチラシを目にするはずなんだ。でも、もしかしたら英語が読めないのかもね。そこんとこは事前に考えておくべきだったかも。
レオノーラ・モラレス: ノア、あなたは普段から何をやってるんです?
ノア・パテル: うん、色々とね。あなたの調子はどうだい、トニー?
トニー・カタラーノ: まぁまぁかな。朝寝坊してブランチ食ったら、例の呼び出し-
[口にキャンディケインをくわえたヴィンセント・ボハートが入室する。集合した職員たちを見て、ボハートは思わずキャンディケインを吸い込んでしまい、更にキャンディケインは喉の奥へと滑り込んで気管を塞ぐ。彼はすぐに咳込み、会議室テーブルにキャンディケインを吐き出す。]
ヴィンセント・ボハート: こんなとこで何をやってんだ?
トニー・カタラーノ: お前が呼んだんだろ。緊急警報だかなんだか。みんなお前待ちだったんだぜ。
ヴィンセント・ボハート: あー、アレな。もう全部片付いたぞ。誤報だ誤報。全員見事だった、非常に迅速な対応とかあれやこれや。
レオノーラ・モラレス: どういうことですか?! ヴィンセント、あの現地調査は数ヶ月前から計画してたんですよ!
ヴィンセント・ボハート: お前の人事評価には金星を1つおまけしとくよ。
トニー・カタラーノ: じゃあ、俺がラッシュアワーの渋滞に1時間も捕まってたのは — せっかく羽を伸ばせる数少ない休日にだぞ — 全く無意味だったのか? ヴィンセント、おかげで義両親との夕食会は欠席だ!
ヴィンセント・ボハート: おい、恨むならアトランティックシティか、さもなきゃ警報器を取り付けた電気技師にしろ。だから俺は昔のシステムで十分だと言ったんだ。ウチの運営予算のうち、あの工事にどれだけ注ぎ込まれたか知ってるか?
トニー・カタラーノ: ああ。予算は俺が決めてんだよ。いや、別に文句を言っちゃいないさ。義両親はハムと七面鳥のミートローフを、つまり一緒くたに混ぜて持参するだとか、そんなおっかねぇことを言ってたんでね。正直に言おう、ここに居られることに乾杯。
[トニーはマグカップの中身を一口すすり、咳込みながら濃い液体を吐き出す。]
トニー・カタラーノ: ニューボーン・ベイビー・ジーザス、一体全体こりゃ何だ?
ヴィンセント・ボハート: エッグノッグだよ。
ヴィンセント・ボハート: 大部分ラム酒だけどな。エッグノッグは賞味期限切れだったんで味付けに使った。
[トニー・カタラーノは鼻をつまんでもう一口飲む。ノア・パテルもコップで液体を多少掬う。]
ヴィンセント・ボハート: どうでもいいが、ノア、お前は酒飲んでいい歳なのか? 21歳越えてるか?
ノア・パテル: 32歳。
ヴィンセント・ボハート: あぁん、マジでか?
ノア・パテル: 先月送った誕生日パーティーの招待状にちゃんと書いたじゃないか。あなたにもカードをあげたよ。そしたら、その週末は外せない用事があるから来られない、もし今度その外せない用事がどの週末に入ってるか忘れてたら改めて教えてくれって言うからさ。
トニー・カタラーノ: ちょっと待った、ヴィンセント、_お前は_サイトに何しに来た?
ヴィンセント・ボハート: 我が家のオーブンがぶっ壊れたんで、晩飯を作りに来た。
レオノーラ・モラレス: [手を振って紙帯を指す] じゃあ装飾は? この前までありませんでしたよ、ヴィンセント。
ヴィンセント・ボハート: [肩をすくめる] インターンの連中にも仕事をやらんとな。飾り付け以外には、浜辺に穴を掘らせるぐらいしか無い。
ノア・パテル: ああ、懐かしいねぇ。私はあの浜辺であなたが探してた腕時計を見つけたんだよ。
レオノーラ・モラレス: つまり、これは収容違反と称して私たちをここにおびき寄せ — この時点で間違いなく幾つか財団の規定に違反してますよね — 幼稚園児が飾り付けたような部屋で謎の手料理を振る舞うための手の込んだ策略ではなかった、ってことですか?
ヴィンセント・ボハート: 俺がお前らと_もっと_一緒の時間を過ごしたがるとでも思ってんのか?
トニー・カタラーノ: まぁ、とにかく全員集合してるんだし、_俺は_帰らないぞ。どんな料理かな、ヴィンセント?
[ヴィンセント・ボハートは数秒間ぼんやりと一同を見つめる。]
ノア・パテル: 大丈夫かい、ボス?
ヴィンセント・ボハート: ん… いや、うん、よく分からん。
トニー・カタラーノ: 飯の話をしてる最中に、少しの間ボーっとしてたぞ。何を料理してるんだ?
ヴィンセント・ボハート: 分からん。
トニー・カタラーノ: 分からんってどういう意味だよ?
ヴィンセント・ボハート: 料理してたのは覚えてるんだ… 何かを。ただ、思い出せない。
レオノーラ・モラレス: 大方、オーブンにこびり付いた古い油汚れの煙でも吸い込んだんでしょう。やっぱり掃除しなきゃダメですって。
トニー・カタラーノ: ありゃ自洗式だろ? ノア、ヴィンセントがハムの焼き過ぎかなんかでサイトを全焼させる前に見てこい。
ノアが退室し、ヴィンセントは着席する。一同はノアが戻ってくるまでの1分間、とりとめのない会話をしている。
レオノーラ・モラレス: で、夕食はどんなでした?
ノア・パテル: それが — 思い出せなくて…
説明: SCP-7855は現在、サイト-333の従業員キッチンで、ヴィンセント・ボハート管理官によって調理されています。ヴィンセント・ボハートとの会話や、オーブンの中身を確認する他の試みにおいて、決定的な結論は得られませんでした。SCP-7855の下準備・調理に直接携わっていない時、職員はそれに関していかなる詳細も回想することが不可能です。具体的には、
トニー・カタラーノ: それでどうなった?
トニー・カタラーノ: うわぁお、酷ぇなこりゃ、最低クリスマス賞の受賞者はお前に決定だ。
特別調理プロトコル: 問題の料理は、50cm×50cm×25cmの従来式オーブンの内部に、華氏425度で4時間収容されています。利用する際は、まず_上に_引き上げ、_それから_外側に引っ張らないと開かないようになっている若干建付けの悪いドアを介して行います。またしてもヒューズを吹っ飛ばしたりしないように、サイト職員がオーブンの作動中にミキサー、トースター、コーヒーメーカーなどを使用することは絶対許可されません。また、オーブンの端から大量の熱が漏れ出すため、付近で調理や食事をする全ての職員は、オーブンから十分に距離を取ることを推奨されます。
サイト-333職員は、SCP-7855を調理していた際の感覚を説明できなかったものの、一様に“腹が減ってくる”経験だったことに同意しました。SCP-7855が調理されている間に、職員たちは集団摂取に備えて非異常な食品の準備を開始しました。
ある程度経過した後、ヴィンセント・ボハートは“そろそろ頃合い”だと判断し、SCP-7855はオーブンから取り出されました。正確には、未洗浄のベーキングトレイがサイト-333のキッチンシンクに放置されているため、取り出されたものと推測されています。
サイト-333 監視映像
警告: カメラ電池残量僅少
映像日時: 2023/12/22
時刻: 8:19 pm
一同はサイト-333会議室テーブルを囲んで座っており、外では雪が降り続けている。食べかけの、平凡な、外見で種類を判別できる食品がテーブルの上に広げられている。椅子には新しいワインの染みが幾つか見える。
ヴィンセント・ボハート: そんなこんなで、俺はブラックジャックのテーブルの後ろでカードを配ろうとしてて、ヤギは俺がポケットに隠した100ドル札の束をかじろうとしてたんだ。で、身長8フィート云インチはあろうかって憤怒の悪魔が睨み付けてきたんで、俺はこう言ってやったのさ、「おい、ビュッフェでヤギの脚のローストを出してるらしいじゃないか、あんたはきっと生贄を食べ損なったんだな」。
ヴィンセント・ボハート: そりゃもう激おこよ。テーブルを真っ二つに叩き割りやがった。ビビって逃げた毛むくじゃらのお友達をそいつが追っかけてる間に、俺はチップを持って裏口からトンズラしたってわけだ。
ノア・パテル: それでサイト-666から異動になったのかい?
ヴィンセント・ボハート: いや、そいつはまた別な話だよ。お前はどうだ、レオノーラ? この時期の印象に残ってる祝日は?
レオノーラ・モラレス: 一度、フェロー諸島でクリスマスを過ごしたことがあります。1人用のマイクロテントで冷えた豆の缶詰を食べながら、鳥の糞のサンプルを採取して異常な寄生虫を探しました。
レオノーラ・モラレス: 私の一番楽しかったクリスマスの思い出です。
トニー・カタラーノ: そりゃまた、いかにもホールマーク・チャンネルが放送しそうな心温まる祝日エピソードですこと。
レオノーラ・モラレス: (笑う) オーケイ、次のお題はお気に入りのクリスマス映画、どうぞ。
トニー・カタラーノ & ヴィンセント・ボハート: ダイ-
レオノーラ・モラレス: ダイ・ハードは無しで!
ヴィンセント・ボハート: ダイ・ハード3。
トニー・カタラーノ: クリスマス映画じゃねぇだろ、舞台は夏場だぜ。
ヴィンセント・ボハート: マジかよ。オーケイ、ナショナル・ランプーン/クリスマス・バケーション。子供時代を思い出す。
レオノーラ・モラレス: 映画を見たことをですか、作中みたいな騒動をですか?
ヴィンセント・ボハート: 両方だ。お前は、ノア?
ノア・パテル: グリンチだ。メディアで正確に描写された未確認動物を見る機会はあまり無いからね。
トニー・カタラーノ: でもあれは-
ヴィンセント・ボハート: まぁまぁ、言いっこなしにしようぜ。そういう季節じゃないか。
レオノーラ・モラレス: ところで、ええっと。皆さん、今しがた食べた“アレ”について何か感想は?
一同は会議テーブルの中央に目をやる。汚れ一つ無い空の大皿が、一連のより小さな食器類・刃物類に囲まれている。
トニー・カタラーノ: うーん、悪かぁなかったね。今夜食わせられるはずだったクリスマス・ミートローフ以下ってことはあるまい。
ノア・パテル: あの歯応えをどう説明したらいいかな? 思い出せない。なんかこう… 弾力がある? 筋張ってる?
レオノーラ・モラレス: 両方じゃないですか? グレイビーソースは間違いなく引き立て役になってました。クランベリーソースも。何を食べたにせよ、スープに近かったと思います。
ヴィンセント・ボハート: ふん、何かを噛んでたのは分かるんだが。いや待てよ。
ノア・パテル: うん?
ヴィンセント・ボハート: ちょっと… ワオ。
トニー・カタラーノ: どうした、ヴィンセント?
ヴィンセント・ボハート: 風味を思い出した、ような気がする。ほんのちょっとだけ。
レオノーラ・モラレス: じゃあ、教えてくださいよ。あなたが料理したんですから、それが筋ってもんです。何を思い出したんですか?
ヴィンセント・ボハート: 鶏肉みてぇな味だった。