Information
Name: 兄弟達の花嫁
Author: Dr Devan
Rating: 38/44
Created at: Mon Sep 09 2013
アイテム番号: SCP-032
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル
SCP-032は自動封じ込めユニット535/15に収容されます。SCP-032との直接接触は研究関連タスクに限定されます。インタビューが必要だとみなされた場合は、ユニットとの遠隔対話アレイを通じて行ってください。SCP-032の存在が人体に直接の危害をもたらすわけではありませんが、人体に住む多くの共生微生物群に副作用があるため、接触は12時間以内に留めてください。人間による精製を受けていないあらゆる生物的物質、特に訓練等を経ていないヒト以外の生物はSCP-032に曝すべきではありません。分類の完全な一覧は文書032-RCLを参照してください。SCP-032に何らかの物質や娯楽は必要ではなく、それを要求したこともありません。
説明
SCP-032は現在起源不明のタイプF(外見的に不完全、体内構造は非調和的)人形型実体です。外殻は着色されたシリコーン樹脂(厚さ5.5ミリメートル)と様々なプラスチック繊維ポリマーで構成されており、外見は20代後半の白人女性に似ています。SCP-032の内部は完全に液体の精製油で満たされており、骨格や筋肉は存在しません。これにもかかわらず、SCP-032は運動や発声が可能です。SCP-032は中程度の距離では自身を人間に見せかけることが可能ですが、近距離では相違点が目立ち、ほとんどの観察者に軽度の不快感を及ぼします。この作用に異常性はないと考えられています。完全な認知機能を有しているように見えるにもかかわらず、SCP-032は自分自身について、自分は製作者との中継装置として機能するのみであり、知的存在ではないと主張しています。財団はこの主張を確認、または否定することができていません。
SCP-032は、近傍の生物的実体に対して極端な悪影響を与えます。しかし、この作用は人間に作られた、人間から意識的な影響を受けている、人間に操作されているなどの形で人間と関わっている生物には及びません。作用の正確な性質は種によって変化がありますが、SCP-032の存在は対象となる生物に対し、エネルギーの交換や利用を行う能力に重度の回復不能な損傷を与えます。例えば、野生植物は光合成などの手段によるエネルギー生産、消費能力を失い、野生動物であれば呼吸器系や消化器系が機能を失います。この作用は微生物にも同様に及び、この場合はその増殖機構に損害を与えるようです。
SCP-032はスロバキア、██████████近くの財団サイト-██において、収容区画の戸口に座っているところを発見されました。財団の保安要員に質問を受けたSCP-032は自身の異常特性を説明し、自身を「収容する」ように要求しました。監視映像にその到着は記録されておらず、SCP-032がどのようにサイト-██の場所を知り、見つかることなく接近することができたのかは不明です。財団に保護を求めた理由を尋ねられたSCP-032は、製作者に「必要とされるまでの無期限の保管場所」を探すように命令を受けたと回答しました。
注: このインタビューはSCP-032の初期封じ込め直後、サイト保安要員による初期検査の後に、サイト-██専属の心理学者であるアレクサンダー・コバチ博士によって行われたものである。
<記録開始>
コバチ博士: 始める前に一つ。私は、あなたに質問に答えていただけるようお願いしなければいけないと感じています。保安要員はそのようなやり方をしないことがあるのでね。プロトコルに厳密に定められているわけではありませんが、経験上こうする方がうまく行きやすいんですよ。
SCP-032: 私は協力するように命令されています。
コバチ博士: ああ、それは素晴らしい。それなら、まず名前を教えてください。
SCP-032: 名前はありません。人間は名前を持ちますが、私は人間ではありません。
コバチ博士: 本当に? では、製作者はあなたを何と呼んでいたのですか?
SCP-032: 私を呼ぶことはありませんでした。
コバチ博士: でも、彼らも何らかの形であなたに言及したはずですよね?
SCP-032: 私は彼らの意志の運び手であり、それ以上のものではありません。彼らは私を呼ぶ必要がなく、そうしようともしませんでした。
コバチ博士: それなら、あなたをSCP-032と呼んでも構わないでしょうか?
SCP-032: 私は協力するように命令されています。
コバチ博士: 分かりました、分かりました。それでは、あなたがここに来た目的を教えてください。
SCP-032: 私は回収されるまでここに留まるつもりです。
コバチ博士: そこまでは保安要員に聞きました。しかし、なぜここを選んだのですか? 誰に回収されるのですか?
SCP-032: 彼らが苦しめたい者によって回収されます。ここを選んだのは、彼がここで私を見つけることで、彼がさらに苦しむことになるからです。
コバチ博士: 本当に? ならば、あなたの言う人はこの組織の中にいるのですか? あなたの製作者は工作員の誰かに何か恨みを抱いているのですか?
SCP-032: 彼はあなた方の一人というわけではありません。単に……一時の道連れ、のようなものです。彼は、あなた方が一度、彼を助けようとしたと考えています。あなた方が彼をここに連れてくるか、彼が私をここで見つければ、あなたは死ぬでしょう。それは彼を傷つけます。彼らはあなた方の誰かや、その組織に興味はありません。あなたも私と同じように、道具としてここにいるのです。
コバチ博士: では、その男とは誰ですか? 彼はなぜ、あなたの製作者からこのような扱いを受けることになったのですか?
SCP-032: 彼は身の程を知らなかった。彼は負けるべき時に勝ち、謙虚であるべき時に自惚れていました。濫用するにはあまりにも貴重な贈り物を無駄に浪費しました。
コバチ博士: そして、あなたはその罰としてここにいると?
SCP-032: 彼は既に罰を受けています。それも酷く。親族やその愛情から引き離され、永遠の放浪の中で自身の意思に反して全てを破壊し続ける。その存在はまさに人類に対する毒です。終わりなき罪悪感に彩られた永遠の孤独。彼らはそれを、苦痛の最高傑作だと言いました。
コバチ博士: そうだとしたら、なぜあなたがここに必要なのですか?
SCP-032: それは、そのような状態にあっても未だ慰めを感じる瞬間はあるからです。彼は世界に目を向け、彼が破壊しないであろうものを見ることができます。彼は自然の内に暖かな驚異を感じ、そこに遥か昔の古びた思い出の名残を見たような気になるのです。それは彼を正気に保ち、希望を与えます。望ましいことではありません。だから私が存在するのです。私は彼の最後の破滅であり、彼の理性の終焉を早める存在です。
コバチ博士: それで、あなたの存在はどのようにそれに関わるのですか? 彼を何らかの方法で騙す、ということなのですか? それが、あなたが行き場所を探した理由なのですか?
SCP-032: ある意味ではその通りです。彼は放浪の果てにいつかここへ、私の下へ辿り着くでしょう。1日後か、1ヶ月後か、1世紀後かは分かりませんが。彼は私に気付き、彼らがその大切な思い出をいかに嘲ったかを見るでしょう。彼は、己の行為のために彼女は永遠にその手から離れてしまい、残されたものは……私だけであることに気付くでしょう。彼の希望は1体の人工の人形だけ。彼が私を見つければ、私は彼に付いて行きます。彼は自らの思い出の紛い物を見て、彼の最後の慰めは破壊されるでしょう。物事はそう進むのです。
コバチ博士: 私は……ええと。あなたは、彼はあなたのことに気付くと言いました。なぜですか?
SCP-032: 私は彼の妻だったのです。
<記録終了>
注: このインタビューはSCP-032の初期封じ込めから6ヶ月後、SCP-032の認知機能や人格、またはそれらの有無について評価することを意図したインタビューの一環として行われた。
<記録開始>
SCP-032: 私は彼女が嫌い。
コバチ博士: えーと……確かにそのようなインタビューの始め方もあるでしょう。詳しく説明していただけますか?
SCP-032: 私がそれに似るように作られた人。つまり私の……原型。私は彼女が嫌いです。
コバチ博士: あなたが、自分は意識や感情を持っていないと何度も保証したことを考えると、そのような発言は興味深いですね。
SCP-032: 違います。私が彼女を嫌うのは、彼らが私にそうして欲しいから。それが彼らの目的に適うことです。
コバチ博士: どうしてそのような感情を抱くようになったのですか?
SCP-032: 私が完成した時に彼らが最初にしたことは、彼女に私を見せることでした。彼らにとっても滅多にやることではありません。
コバチ博士: よく分からないのですが。
SCP-032: 広間の向こう側の人々に干渉することです。彼らは執念深く、悪意に満ちて、残酷ですらあるかもしれませんが、自身の職務には非常に熱心なのです。彼女の永久の眠りを妨げる危険を冒してまで彼女に私を見せるなんて……彼らも目的なしにそんなことはしないでしょう。
コバチ博士: それは―
SCP-032: 彼女は美しかった。その全てが、とても落ち着いていて穏やかだった。死んで消え去ってしまったとしても、私は彼女の持っていた本質を……彼女がどうであったかを、彼女の魂を、永遠に思い出し続けるでしょう。彼らは私に彼女はそれほど長生きするわけではないと伝えましたが、彼女が生きていた時……彼女は彼女自身だった。彼女は生きていた。だから彼女が嫌い。
SCP-032: 紛い物として作られたということが、どんな感じか知っていますか? 滑らかな無表情の顔、鏡に映るそれは歪んで見える。成形プラスチックの匂いの肌、合成繊維の柔らかな髪、血液は油。魂は全く籠っていません。
コバチ博士: おこがましく聞こえたら申し訳ないのですが、そのような存在をあなた以外に見たことのない私では、その感情を想像できません。
SCP-032: [首を横に振る] 分かりませんか? これは全て彼らの計画の一部なのです。彼が私を、兄弟達が彼をさらに罰するためにだけ作り上げたものを見たら……彼は怒り狂うでしょう。
コバチ博士: だから、彼らは彼の妻の思い出を利用したのですか?
SCP-032: それだけではありません。彼が私を見るからです。私がどれほど彼女を嫌っているか、私が、自分自身が彼女でないことをどれほど憎んでいるかに気付くからです。憎しみは常にここにあるのです。
コバチ博士: そして、どうなるのですか?
SCP-032: そして……最後に気付くのです。
コバチ博士: 何にですか?
SCP-032: 彼は、勝利してなどいないということに。
<記録終了>